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月刊The Lawyers 2008年6月号(第105回)

3. Caraco Pharmaceutical Laboratories, Ltd. 対
Forest Laboratories, Inc.事件

Nos. 2007-1404, 2008 WL 850330 (April 1, 2008)

- 事実上の損害には
非侵害製品の自由な開発が制限されることも含まれるか否かが争われた事件 -

カラコ(Caraco Pharmaceutical Laboratories, Ltd)対フォレスト・ラボ(Forest Laboratories, Inc.)事件において、CAFCの合議体における多数派は、たとえ特許権者が訴訟を起こさないと約束していたとしても、ジェネリック医薬品メーカーが医薬品特許に対して異議を申し立てることができるとする確認判決を求める裁判を起こすことを認めた。

その理由は、そのような訴権がなければ、ハッチ-ワックスマン法の下、ジェネリック医薬品メーカーは医薬品特許に対する異議申し立ての手段をもち得ないからであり、もし異議の申し立てに成立すれば、薬を売るためのジェネリック医薬品メーカーの申請を食品医薬品局が承認することを意味するからである。

近頃、メドイミューン(MedImmune, Inc.)対ジェネンテック(Genentech, Inc.)事件の中で最高裁判所が訴権の要件を示したが、本件もこれを満たしているといえる。

メドイミューン事件の中で、最高裁判所は確認判決の訴権に対するCAFCの「合理的な懸念」基準を却下し、それを「全ての状況」の評価を伴う基準に置き換えた。

カラコ事件におけるCAFCの合議体は、「全ての状況」基準には、当事者適格の検討が必要であり、それ自身が、1)実際の損害(原告が被る具体的で実際に起こっているか、もしくは切迫していて、憶測または仮想でない損害)、2)因果関係(被告による訴えられた行為と原告の損害との公正に追及できる関係)、3)救済可能性(要求された救済が申し立てられた損害を補償する見込み)といった、3つの要素が含まれると説明した。(Steel Co. 対 Citizens for a Better Env't 事件の引用)

本件特許が置かれた状況の中で、カラコ事件における合議体の多数派は、事実上の損害には「非侵害製品の自由な開発の制限」も包含されると指摘した。(Red Wing Shoe Co., Inc. 対 Hockerson-Halberstadt, Inc. 事件の引用)

実のところ、合議体の多数派は、「これはまさに判例法のもと、第3項に制定するにふさわしい事実上の損害の一種である」と強調した。

合議体の多数派は、1984年に制定されたハッチ-ワックスマン法の枠組みにしたがって「オレンジブック」の中にリストアップされたフォレストの特許にカラコが異議を申し立てられないことは、このような自由な開発の制限に該当すると認定した。

この枠組みの下では、オレンジブックにリストアップされた特許に対する異議申し立てが成功すれば、食品医薬品局に対しいわゆる「簡略新薬申請」(以下、ANDA)の届けを提出した最初のジェネリック医薬品メーカーが、その薬を販売する6ヶ月間の市場独占権を受ける資格を有することになる。

しかし、ハッチ-ワックスマン法の枠組みの下で、もし最初のジェネリック医薬品メーカーがその特許への異議申し立てに失敗し、薬の販売が開始できなくなれば、オレンジブックにリストアップされた特許がその薬に対して無効となるかまたは侵害していないとの判決によって最初のANDA提出者に付与される6ヶ月の独占期間が開始されないかぎり、他のジェネリック申請者は市場に参入することができない。

したがって、フォレストが自社のオレンジブックにリストアップした特許についてカラコを訴えないと約束していたものの、それら特許に対する異議申し立てに失敗したため、カラコは市場に参入することはできず、また、最初のANDA提出者に与えられる独占期間も開始されないこととなった。

よって、他のジェネリック医薬品会社の参入も承認されないこととなった。CAFCは、このような制限が確認判決の訴権に対する十分な事実上の損害に相当すると結論づけた。

さらに、リストアップすることがなければ、製品の自由な開発の制限はなくなるため、オレンジブックに特許をリストアップすることと事実上の損害とのあいだには原因となる関連性が存在すると判断した。

最後に、無効性(非侵害)の確認判決によってこの制限を解除することで、損害が補償されるであろう。したがって、CAFCは確認判決の訴権に十分な根拠を見出し、地方裁判所の判決を破棄した。

主席判事のフリードマンは、たとえメドイミューン事件においても損害による訴権を認めるには関係性が遠すぎるとして異議を唱えた。

この事件は、メドイミューン事件後のCAFCによって利用可能となった特許事件における確認判決の訴権の広義的範囲をさらに強調し、ジェネリック医薬品会社がオレンジブックにリストされた特許に対する異議申し立ての機会を増やすチャンスを与えた。

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