1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2008年
  4. 2. Ortho-McNeil Pharmaceutical, Inc. 対 Mylan Labs., Inc.事件

月刊The Lawyers 2008年6月号(第105回)

2. Ortho-McNeil Pharmaceutical, Inc. 対
Mylan Labs., Inc.事件

No. 2008 WL 1848659 (April 28, 2008)

- 自明性に関するKSR最高裁判例が適用される範囲が示された事件 -

オーソ・マクニール(Ortho-McNeil Pharmaceutical, Inc.)対ミラン(Mylan Labs., Inc.)事件においてCAFCの3名の裁判官による合議体は全員一致で、オーソ・マクニールが主張する特許に対する侵害行為があったと認定し、また、特許は有効であり、権利行使可能であるとした地方裁判所の略式判決の認定が正しいと結論し、ミランによる薬品の販売の恒久的差し止めを追認した。

オーソ・マクニールの特許は、Topamax®としてオーソ・マクニールにより販売され、しかも商業的成功を収めていた「てんかん」の治療薬であるトピラメートをクレームしていた。

CAFCはまず、法律の中で定義力のあるものとして強調した、一般読者の興味を引くような供述書において、地方裁判所のクレーム解釈を支持して、以下の見解を述べた。

「独立項1、幾つかの従属項、明細書及び外的証拠の平易な文言を考慮すれば、本法廷は、本件の状況下において、請求項1において使用されている『and』は『or』を意味すると認定した事実審裁判所の判決を支持する」

請求項が、化学構造に存在する全ての特徴を要求するのではなく、一連の化学構造を列挙したと結論付けて、CAFCは、ミランの薬品を販売する行為がオーソ・マクニールの特許権を侵害したとする地方裁判所の認定を支持した。

CAFCはさらに、オーソ・マクニールは米国特許商標庁に先行技術を開示しておらず、オーソ・マクニールの特許は「けいれん抑制効果をもたらす量の」トピラメートをクレームしている点で不明瞭ではなかった、と結論付けた。

この判決において特筆すべきことは、CAFCの合議体による自明性の考察である。KSR International 対 Teleflex Inc. 事件(127 S. Ct. 1727(2007))における最近の最高裁判決において、最高裁はCAFCによる自明性の「教示(Teaching)・動機(Motivation)・示唆(Suggestion)テスト」(以下、TSMテスト)を、過度に厳格に適用されたとして拒絶しており、この判決により、侵害被疑者にとって、自明性を理由とする特許無効の主張が非常に容易になったことが関心事となっている。

しかし、オーソ・マクニール事件では、合議体は特許発明がKSR事件で述べられた、より自由な自明性の基準に基づいてもなお、特許発明は自明ではない、と認定した。

ミランは、「課題を解決する(薬の)開発の必要性あるいは市場からの要求があり、かつ、限られた数の特定された予測可能な解決法が存在する場合に、当業者は自分が技術的に把握している範囲で既知の選択肢を追求する正当な理由がある」と主張し、本件にKSR判決を適用するよう試みた。

ミランは専門家証言の形で証拠を提出し、この原則がトピラメートの開示手続に適用されることを示そうと試みた。しかし、合議体はこの証拠は説得力に欠けると次のように認定した。

「KSR判決が適用されるための前提は、自明性を当業者に納得させるような、容易に考察でき、かつ、少数の選択肢だけが存在するような状況である」

そして、ここでは、「幾つかの予測不可能な代替物の中から」選択するために複数の工程が必要であることから、明らかに本件ではKSR判決は適用されないと述べた。

ミランはさらに、KSR事件における最高裁判決より前に、地方裁判所が本件の判決を下していたと主張し、その判決において、誤ってCAFCの自明性のTSMテストを非常に厳格に適用したと主張した。しかし、合議体はこれを否定した。

「柔軟なTSMテストは、KSR判決の後であっても、本件において生じたような自明性に関する非制定法上の後知恵の分析に対抗するための、主たる基準を保証するものである」と述べて(In re Translogic Tech., Inc. 事件、504 F.3d 1249, 1257 (Fed. Cir. 2007) を引用)、CAFCは、「記録は地方裁判所の非自明性の認定を十分にサポートするものである。本法廷は、地方裁判所の分析において自明性の証拠要件が厳格に適用された事実を何も見出せない」として、予期できない効果、長期間待望されていた必要性及び商業的成功を含む非自明性の二次的証拠もさらに指摘して、合議体は地方裁判所の非自明性の判断を支持した。

本件は、クレームされた発明の自明性の認定におけるKSR最高裁判決の適用範囲のある基準を示したものである。

さらに、このより柔軟なテストの適用が必ずしも自明性の結論を導くものではないと指摘した上で、KSR判決後の、自明性を評価する「柔軟なTSMテスト」をCAFCが認めた事件である。

したがって、オーソ・マクニール事件は、特許権者が特許を取得し、その特許に対する侵害者によって申し立てられる自明性の抗弁と戦う上で、役に立つであろう。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2008年
  4. 2. Ortho-McNeil Pharmaceutical, Inc. 対 Mylan Labs., Inc.事件

ページ上部へ