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月刊The Lawyers 2008年3月号(第102回)

3. Hyperphrase Techs., LLC 対 Google, Inc.事件

Nos. 2007-1125, -1176, WL 4509047 (December 26, 2007)

- 明細書または審査経過において
明確に定義されていない文言には通常の意味が適用されることについて -

グーグル(Google)事件においてCAFCは、グーグルがハイパーフレーズ(Hyperphrase)の特許を侵害していないとした事実審裁判所の認定を一部支持し、一部を破棄した。

グーグルは広範囲のインターネットユーザーに製品を提供している有名なインターネットの会社である。2006年11月1日、ハイパーフレーズは、グーグルがハイパーフレーズの2つの特許権を侵害したと主張して提訴した。

本件の技術は、コンピュータ化された複数の記録(レコード)を文脈上関連付ける(リンクさせる)システム及び方法に関するものであった。

侵害被疑品は、グーグルのオートリンク(AutoLink)及びアドセンス(AdSense)アプリケーションであった。争点は、グーグルの2つの製品が、異なる情報源から取得した複数の関係した情報を文脈上関連付けして提示する方法にあった。

オートリンクはウェブブラウザを操作するプログラムである。ユーザがウェブページを訪れると、オートリンクは特定の情報を認識するためにページのコンテンツをスキャンする。例えば、ウェブページ上に、19桁の番号が表示されると、オートリンクはそれをUPS宅配便の追跡番号として認識する。

アドセンスは、文脈上関連した広告主のコンテンツを、そのコンテンツに関係したウェブページに対して体系付けるグーグルのサービスである。

広告主はアドセンスを介してウェブ上で表示される電子広告を、手数料とともにグーグルに提供する。ウェブサイトのオーナーはアドセンスに入会し、グーグルに対し、グーグルからの支払と引き換えにそれらの広告を表示することをグーグルに許諾している。

第1に地方裁判所は、ハイパーフレーズの主張する特許クレームが「データ参照」という限定を含んでいることを理由として、オートリンクはハイパーフレーズの特許権を侵害していないと認定した。

裁判所によると、オートリンクが多くの可能なレコードにリンクすることを許諾している一方で、その限定は「1つの唯一のレコード」を言及していた。要するに、1つのレコードへの最終的なリンク、すなわち、リンクすべきレコードを特定することは、グーグルのサーバー内で行われていた。対照的に、特許のクレームは、リンクが情報を介して分析されたウェブページから生じることを要件としていた、と地方裁判所は認定した。

第2に、地方裁判所は、主張の特許クレームが余りにもデータ参照に欠けていたことから、アドセンスはクレームを侵害していないと判示した。

裁判所は、ウェブページと選択された広告との間のリンクが、ユーザの関心の予測に基づいて行われており、1つのレコードから第2のレコードへの参照に基づいてはいない、と認定した。その結果、地方裁判所はグーグルを勝訴とする特許権非侵害の略式判決を下した。

CAFCにおける控訴審において、ハイパーフレーズは、地方裁判所が「データ参照」という文言を狭義に解釈したのは誤りだったと主張した。

特許権者は自ら文言の定義をすることが可能であり、その定義は解釈を支配する、とCAFCは説明した。即ち、もし特許権者が明細書もしくは審査経過においてクレームの文言に明確な定義がなされていたならば、その文言の通常の意味が解釈として採用されることはないというものである。

CAFCは、地方裁判所が争点となっているクレーム文言を狭義に解釈したと認定した。特に、特許権者がクレーム文言の「a」を 「comprising」と併せて使用し、かつ、狭義の定義を用いていないため、「1つの唯一の」という解釈を推定することはできず、むしろ、単一及び複数の可能性の両方を包含する典型的なものであると述べた。

さらに、特許権者が争点の文言を明細書中において明瞭に定義していなかったことを理由に、その文言の単純な意味が適用される、と述べた。

したがって、CAFCは、データ参照の解釈を1つもしくは1つ以上のレコードを参照するものであると認定し、オートリンクがハイパーフレーズの特許権を侵害するか否かの争点を、新たなクレーム解釈に照らして審理をしなおすよう、地方裁判所に審理を差し戻す決定を下した。

一方で、CAFCは、アドセンスが特許権を侵害していないとした地方裁判所の判決を支持した。この決定はアドセンスの技術がクレームで定義されたデータ参照を使用していなかった事実に基づいていた。

さらにCAFCは、分別のある事実認定者であれば、アドセンスが実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を実行するとは判断しないであろうということを理由に、アドセンスが均等論に基づく侵害もしていないと判断した。

本件は、特許弁護士にとって、クレームの草案時に個々のクレーム文言の選択に細心の注意を払うことの重要性を強調した。即ち、CAFCは、クレームの文言が明細書もしくは審査経過で明瞭に定義されていないならば、その文言は通常の意味が適用されることを述べている。さらに、「a」という冠詞を「comprising」と組み合わせたクレームは一般的に、単一および複数両方の限定の可能性を包含する。これは限定する文言がクレーム中にも存在しない限り当てはまる。

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