1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2008年
  4. 2. Stumbo VS Eastman Outdoors, Inc.事件

月刊The Lawyers 2008年3月号(第102回)

2. Stumbo VS Eastman Outdoors, Inc.事件

No. 508 F.3d 1358 (Fed. Cir. 2007)

- 明細書において明確に定義されていないクレーム構成要素の文言解釈について -

スタンボ(Stumbo)事件において、CAFCは被告であるイーストマン・アウトドアーズ(Eastman Outdoors, Inc)とアメリステップ(Ameristep Corporation)に有利な特許権非侵害の略式判決を認めたコロラド州地方裁判所の判決を支持した。

スティーブ・スタンボ(以下、スタンボ)は、米国特許第5,628,338号(以下、338特許)の特許権を侵害しているとしてイーストマンとアメリステップを訴えた。

338特許は、持ち運びと折りたたみが可能な狩猟用のシェルターもしくはブラインドを対象にしている。この狩猟用のシェルターもしくはブラインドは、ハンターや写真家など自然を楽しむ人々が、簡単に素早く組み立てることができるものである。

このハブスタイルブラインドが完全に組み立てられると、折りたたみ式の支持具によって張られた布の製の4枚の壁と1枚の天井ができあがる。

338特許は垂直の隅部または側面の端部に設けられた「閉じることが可能な垂直の出入り口」を請求項に記載している。この「閉じることが可能な垂直の出入り口」のために、狩猟用シェルターまたはブラインドの使用者は出入りが可能となる。

イーストマンとアメリステップの侵害被疑品も、持ち運びと折りたたみが可能なハブスタイルのブラインドを使用しているが、使用者は、三角形の形をした「ゆったりとしたドアのようなふた」を通って出入りする。

使用者は、側面のひとつの壁の底部から対角線上の北東に向かって中央部までジッパーを開き、そして次に対角線上の北西に向かって上部までジッパーを開くことによって出入りする。

イーストマンとアメリステップは略式判決を申し立てた。裁判において、地裁は「閉じることが可能な垂直の出入り口」という表現を「直線に上下するスリットのような出入り口」と解釈したため、三角形の出入り口は含まれなかった。その結果、被告は338特許の特許権を侵害していないと判断された。

CAFCは地裁の解釈に同意した。CAFCは、地裁がクレームそのものの文言を正確に考察していることを指摘した。そして、CAFCは「閉じることが可能な垂直の出入り口」という表現は、当業界において技術定義がないので、クレームの文言は適切に通常の意味付けがなされたと判断した。

CAFCは、地裁がクレームの通常の意味を制限するために明細書を不適切に用いたとするスタンボの反論を退け、338特許の明細書は本質的に出入り口のためにスリットのような形をしたものを必要とすると認定した。

CAFCはさらに、特許権者はこの発明を実施する他の形状をした出入り口について意図していたことは、明細書から何ら伺い知ることができないと付け加えた。

スタンボは侵害被疑品に垂直のスリットのような出入り口はなかったと認めたので、CAFCはその侵害被疑品は文言侵害を構成しないと認定した。

338特許において請求されているスリットのような出入り口と侵害被疑品の三角形のドアのようなふたとが、実質的に同じ方法で動作し、実質的に同じ結果をもたらすかどうかということに関して、スタンボは重要な事実の争点を見出すことができなかったので、CAFCは、均等論上の侵害も成立しないと判断した。

CAFCによると、イーストマンは結果と方法において、垂直なスリットのような出入り口と三角形の出入り口とは本質的に異なっていると当業者は判断することを宣誓書の中で述べた。

同様に、CAFCはアメリステップも代表者が宣誓を通して似たような証拠を提示したと認定した。それ故、CAFCは地裁の決定を支持した。

今回のケースは、発明者自身が辞書編集者(文言の意味の定義者)とならない場合、CAFCはそれぞれのクレーム構成要素が有する通常の意味に頼るという従来通りの考えを再確認させるものである。

従って、その業界において、クレーム要素に対して技術的定義がなければ、その文言の通常の意味がその解釈に適用される。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2008年
  4. 2. Stumbo VS Eastman Outdoors, Inc.事件

ページ上部へ