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月刊The Lawyers 2008年3月号(第102回)

1. Digeo, Inc. 対 Audible, Inc.事件

No. 505 F.3d 1362 (Fed. Cir. 2007)

- 米国特許法第285条に基づく
弁護士費用に関する申し立てが認められる基準が示された事件 -

Digeo 事件において、ワシントン州西部地区の米国地方裁判所は、オーディブル(Audible, Inc.)が米国特許法第285条に基づいて行った弁護士費用の申し立てを否認し、CAFCはこれを維持した。

ディゲオ(Digeo, Inc.)は、マイクロトーム(Microtome, Inc.)から特許権を承継したIPDNコーポレーションから、破産手続の際に、米国特許第5,734,823号(以下、「823特許」)を「そのままの状態で(as is)」購入した。

823特許は、ビデオ・ポケット・リーダの中に一般に組み込まれている、電気通信と情報の記憶を行うシステムと装置に関するものである。

破産手続の前にディエゴは823特許の包袋を入手したが、その包袋には、823特許の発明者の遺産の遺産執行人が署名したとされる委任状が含まれていた。しかし、包袋にはその発明者が死亡したことを証明する文書は全く含まれていなかった。

823特許はマイクロトームを譲受人のリストに挙げている。823特許の発行よりも前の日付が記載されたマイクロトームへの2つの譲渡証書が存在したが、それらに対する署名は、発明者ではなく遺産執行人とされる者によってなされていた。また、その譲渡証書は、破産手続の数週間前まで米国特許商標局に提出されていなかった。

破産手続の後に、ディエゴは、オーディブルを823特許の特許権侵害で提訴した。訴訟中に、オーディブルは、遺産執行人とされている者と、死亡していなかった発明者の宣誓供述書をとった。さらに、オーディブルは、特許発行日までの遡及効を有している823特許のライセンスを発明者から取得した。

次に、オーディブルは、ディエゴが823特許について完全な権利を有していないから当事者適格を欠いていると主張して、略式判決または訴訟の却下の申し立てを行った。地方裁判所は、オーディブルの主張を認め、譲渡証書は偽造されたものであるから、ディエゴへの権原の移転は無効であると判断した。

また、偽造についてディエゴが知っていた、または、知るべきであったことを示す証拠をオーディブルは全く提出していなかったとして、地方裁判所は、オーディブルがした米国特許法第285条に基づく弁護士費用に関する申し立てを却下した。

控訴審において、CAFCは、オーディブルの弁護士費用に関する申し立てを地方裁判所が適正に却下したか否かについて検討した。

米国特許法第285条に基づく弁護士費用の裁定は2段階のプロセスで行われた。まず、地方裁判所は、その事件が例外的であることを示す明白で確信を抱くに足る証拠があるか否かを判定し、そのような証拠がある場合は、弁護士費用の裁定が正当であるか否かを判定しなければならないとCAFCは説明した。

CAFCは、例外的な場合とは、濫用的な訴訟か、正当化されない訴訟か、あるいは、不真面目な場合であることを確認し、この事件は例外的ではないと結論づける際に地方裁判所は明らかな誤りを犯していないと判示した。

譲渡証書が包袋に存在していることは期待されておらず、したがって、823特許の包袋に譲渡証書が存在しなかったことは重要ではない、とCAFCは説明した。

さらに、CAFCは、823特許の発行前はマイクロトームが単独の譲受人だったことの正当性をマイクロトームが主張したことと、後に記録された譲渡証書は、いい加減な事務処理手続きに該当し、瑕疵ある権利行使ではないということも強調した。

また、CAFCは、ディエゴの訴訟前の調査の適切性に関する立証責任をディエゴに転換することを地方裁判所が拒否したことは適切だったかについても検討した。

地方裁判所は立証責任をディエゴに転換すべきだったという主張を補強するために、オーディブルは、ビュー・エンジニアリング対ロボティック・ビジョン・システム(View Engineering, Inc. 対 Robotic Vision Systems, Inc.)事件(208 F.3d 981, Fed. Cir. 2001)を引用した。

ビュー・エンジニアリング事件は、規則11の制裁に係る立証責任の転換を判断した第9巡回裁判所の判例法に基づいたCAFCの事件である。

CAFCは、米国特許法第285条の申し立てと規則11の申し立てとは異なるとして、オーディブルのビュー・エンジニアリング事件への依拠を認めなかった。

規則11の事件では、訴訟当事者が制裁を申し立てる場合、訴訟前に相当な調査を行ったことの立証責任は被申立人に転換される。しかし、訴訟当事者が米国特許法第285条に基づく弁護士費用の申し立てを行う場合は、明白で確信を抱くに足る証拠によって、その事件が例外的であることを示す立証責任は申立人に残存する。

したがって、地方裁判所は、事件が例外的であることの立証責任をオーディブルに残す判断を適正に行っていると言えるため、CAFCは巡回裁判の判例法を米国特許法第285条の事件に適用することを拒絶した。

CAFCは、さらに、規則11の行為は例外的な場合の基礎となりうるが、本事件ではそのような認定はなされなかったと説明し、特許を「そのままの状態で」購入した場合の、訴訟前の調査に関する基準を高めることはないと判断し、例外的な場合であることが成立するためには単なる過失では不十分であり、特許権の購入者は法的な権原に瑕疵があることを知っていなければならない、または、知るべきであったと判断した。

本事件は、米国特許法第285条に基づいていわゆる「例外的な場合」の弁護士費用を請求する場合、弁護士のために最も不適切な行為がなされたことが要求されることを強調している。

すなわち、純粋に客観的な過失の基準ではなく、誤認について弁護士が知っていたこと、または、知るべきであったことが要求される。さらに、米国特許法第285条に係る立証責任は、規則11とは異なり、地方裁判所の規範に基づいて転換されないことになる。すなわち、CAFCの規範がこれを支配しているのである。

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