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月刊The Lawyers 2008年2月号(第101回)

3. Z4 Technologies, Inc. 対
Microsoft Corp.事件

No. 2006-1638 (November 16, 2007)

- 新規性欠如による特許無効の主張における発明の実施化の立証要件を扱った事件 -

Z4テクノロジーズ社(Z4 Technologies, Inc.)対マイクロソフト社(Microsoft Corporation)事件においてCAFCは、マイクロソフト社による法律問題としての判決(以下、JMOL)の申立及び、新たな裁判の申立を却下したテキサス州東地区地方裁判所の判決を支持した。

その申立は、陪審裁判において、マイクロソフト社がZ4の米国特許第6,044,471号(以下、471特許)及び第6,785,825号(以下、825特許)を侵害し、それらの特許の無効を立証しなかった、と認定された後に提出された。

このCAFC判決は、特許付与されていない発明に基づく新規性欠如の立証基準に加えてJMOLの基準についても言及している。

471特許及び825特許は、ソフトウエアの著作権侵害行為防止、特にソフトウエアの不正コピー及び無断使用の防止に関する発明である。

これらの特許は、モニタリング登録システムを介して、許諾したユーザーに管理者から提供されたパスワードもしくは認証コードの定期的な変更を要求することにより、使用許諾されたソフトウエア数を制御するシステムを通して、ソフトウエアの著作権侵害を防ぐものである。

特許に記載された仕組みは、ユーザーに対し、初期パスワード、もしくは認証コードを用いて、所定の猶予期間においてソフトウエアを使用することを許諾し、その後、そのソフトウエアを継続して使用するためにソフトウエアの登録を要求する、というものである。

ユーザーが送った情報を、以前に格納された登録情報と比較して、ユーザーがソフトウエアの使用を許諾されているか、ソフトウエアが使用不可であるかを判断する。

この事件の訴訟手続において、Z4はマイクロソフト社の、Windows 及び Officeに使用されている、Z4の特許を侵害している「製品の有効化」という特徴について警告した。マイクロソフト社は、新規性欠如及び自明性を理由にZ4の特許は無効であると回答した。特に、マイクロソフト社は、1998年に実用化された自社のソフトウエアである、Licensing Verification Program(以下、LVP)は、Z4の主張する特許クレームを無効とする先行技術として十分であると主張した。

事件が地方裁判所の裁判にかけられた際、陪審員はマイクロソフト社に対し、全ての3つのクレームの故意侵害を認定し、Z4の損害額として1億1500万ドルを認定した。拡張損害額の要求を受け、裁判所は2500万ドルの追加損害額を認定した。

地方裁判所の侵害判決を分析する上で、CAFCは、地方裁判所によるクレーム文言の解釈を審理した。マイクロソフト社は「ユーザー」「自動的に」「パスワード」「認証コード」という文言を不適切に解釈されたと主張していた。しかしながら、CAFCはその主張を認めず、マイクロソフト社による文言に関する主張は「形だけであり、重要性は低く」、また「不誠実」である、と認定した。

マイクロソフト社による、自社のLVP製品による新規性欠如に基づく特許無効のJMOLの申立に関し、地方裁判所は、分別ある陪審員ならば、LVP製品が著作権侵害を止める目的では作動しないという結論を出したであろうという点を唯一の根拠として、マイクロソフト社の主張を否認した。

米国特許法第102条(g) (2)に基づくと、他の者が発明を最初に着想し、誠実な努力の後に発明を実施したことを立証しない限り、発明の優先権はその発明を最初に実施した者に与えられる。

さらに、実際の発明の実施化は、(1)実施例を構築、あるいは全ての限定を満たす工程を実行する、及び(2)発明が意図した目的に有効であることを究明することによって立証されなければならない。

本件の地方裁判所によって用いられた適切な規準は、「分別ある陪審員であれば、勝訴する側を認定するための、法的に十分な証拠の基盤を持っていないであろう(Fed.R.Civ.P.50(a)(1))」という点なしに、JMOLを否定することであった。

本件では、地方裁判所は、マイクロソフト社が発明が著作権侵害を止める目的に作動することを立証しなかったことを理由に、マイクロソフト社が実際には発明を実施化していなかったと陪審員が信じたことは合理的であった、と判示した。

マイクロソフトは、意図した発明の目的は地方裁判所が定義付けたような「著作権侵害を止めること」ではなく、「著作権侵害を減らすこと」であったと主張した。

CAFCはこの点についてマイクロソフト社の主張に同意したが、それでも、分別ある陪審員がLVP製品は著作権侵害を減らす目的にも作動しないという結論に至る十分な証拠があると判示した。

有効性を測定することの困難さに加えてソフトウエアの問題点についても示した、マイクロソフト社による1998年の電子メール及び製品発表もこの証拠として含まれた。

結論として、本件は、新規性欠如による特許無効の主張における発明の実施化の立証要件を、改めて浮き彫りにした事件である。また本件は、法律問題としてのJMOLの申立を裁判所が認可する基準を再度明らかにした事件である。

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