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月刊The Lawyers 2008年2月号(第101回)

1. Apotex 対 Merck & Co., Inc.事件

No. 2006-1405 (November 16, 2007)

- 連邦民事訴訟規則第60条(b)3に基づくフロードを理由とした
先の判決の取消の要件に関する事件 -

ここで取り上げるアポテックス(Apotex)対マーク(Merck & Co., Inc.)事件は、アポテックスがCAFCに連邦民事訴訟規則第60条(b)3に基づき詐欺(フロード)を理由に判決の取り消しを求めた事件である。

CAFCは、マークにとって有利な略式判決を認めたイリノイ州北地区地方裁判所の略式判決を支持した。その略式判決はまた、アポテックスが弁護士-依頼者間の守秘義務特権の犯罪不正に関する例外に従い強行的なディスカバリーを行った、コモンロー上の詐欺と将来的な経済的利益に対する私的な干渉に関する州法に基づく追加の請求についても、マークに有利なものであった。

1996年にアポテックスは、マークが使っているVASOTEC のタブレットの製法はアポテックスの米国特許第5,573,780号及び米国特許第5,690,962号を侵害していることを理由に、イリノイ州北地区地方裁判所にマークを訴えていた。

しかし、地裁はその製法は、その発明日より前にマークによって発明され、使用されていたとして米国特許法第102条(g)に基づき、アポテックスの特許は無効であるとの判決を下した。

米国特許法第102条(g)では、特許出願人による発明前に第三者によって発明がなされており、その発明が放棄、隠匿、もしくは秘密にされていない場合、特許出願人は特許を受ける権利を与えられないとされている。

アポテックスは、マークがその発明を隠匿、もしくは隠蔽し、秘密裏に実施していたので、自分に特許権が与えられるべきであると反論した。しかし、地裁はこの反論を退け、マークはこのような行為を行ってないと認定した。

この認定は、マークがその製品の原料のリストを広く頒布しており、その原料に水を加えて混ぜ合わせるという科学者であれば誰でもが知りうる反応を起こすことに基づいている。

さらに、1991年に、マークはアポテックスのカナダ支社をマークのカナダ特許の侵害により訴えており、その裁判での陳述を公の開示行為と判断した。それゆえ、CAFCは2001年の控訴においてこの認定を支持した。

この1年以上後に、アポテックスは地裁判決とCAFCによる支持判決は、マークが不正な手段で得たものだったと主張し、地裁に再度訴えを提起した。

アポテックスは、カナダにおける公開宣誓書に関する略式判決の申立書とディスカバリー請求への応答の中で、マークは偽証していたと主張した。このアポテックスの主張の根拠は、マークの重要な証人であるDr. Brenner が、彼が鑑定人であった別の事件において反対の証言をしたことに基づく。

地裁は、マークの不正行為は、その製法の細部に関係していて、製法を広くカバーするアポテックスの特許の有効性とは無関係であると認定した。

さらに、地裁は不正な陳述は、宣誓供述書でも証拠でもないとした。むしろ陳述は、ディスカバリーの間に明らかになった証拠からの合理的な推論に基づいた弁護士の意見であるとした。それ故、第60条(b)の救済のための理由を立証できなかった。

それに加えて、地裁は、アポテックスは弁護士・依頼者間の秘匿特権の犯罪不正の例外を申し立てるに十分な立証を行わなかったと判決した。

控訴審においてCAFCは、申し立てられた不正の陳述を地裁が適切に分析したことを認め、地裁判決を支持した。さらにCAFCは、それ以前には明らかにならなかった「裁判に関する不正行為」もしくは重大な行為が存在し、判決後1年以内に申し立てが行われた場合にのみ、第60条(b)3に基づき不法行為に対する判決が取り消されうる、と入念に説明をした。

CAFCは「裁判に関する不正行為」は、主として裁判官や陪審員への贈収賄、もしくは裁判に対して不適切な影響力を行使するといった行為に限定され、厳格な証拠が要求されると言及した。

アポテックス対マーク事件は、一年後に起こされた申し立てによって第60条(b)3のもと判決が覆されるためには、「裁判に関する不正行為」の厳密な証拠もしくは以前には明らかにされていないその他の重大な行為が要求されることを明らかにした。さらに、裁判での弁護士の意見でなされた偽りの陳述では、「裁判に関する不正行為」にはならない。

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