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月刊The Lawyers 2008年1月号(第100回)

3. Biomedical Patent Management Corp. 対
State of California, Department of Health Services事件

No. 2006-1515 (October 23, 2007)

- 合衆国憲法修正第11条による免責特権の特許事件での適用 -

BPMC 対 DHS事件(Biomedical Patent Management Corp. 対 State of California, Department of Health Services)では、CAFCでの論点は、裁判地が不適切であるために却下された関連する訴訟に州が過去に参加した場合に、その州が合衆国憲法修正第11条に基づく免責特権を主張することができるかどうかというものであった。

合衆国憲法修正第11条は各州に対して免責特権を付与しているが、これは州が訴訟を承認しない限り、他の州の市民は連邦裁判所でその州を訴えることができないことを意味している。

カリフォルニア州北部地区の米国地方裁判所は、過去の訴訟で免責特権を放棄したことは、この訴訟にまでは及ばず、州の行った棄却申し立てを許可する判決をしたが、CAFCはこの判決を維持した。

バイオメディカル・パテント・マネジメント・コーポレーション(以下、BPMC)は、妊婦の先天性欠損症を検査する方法に関する米国特許第4,874,693号(以下、693特許)の特許権者である。

BPMCは、(カリフォルニア州の)医療サービス局(以下、DHS)が693特許を侵害している衛生試験業務を行っていると主張した。

1997年に、DHSの下請けのカイザー・ファンデーション・ヘルス・プラン・インク(以下、カイザー)は、カリフォルニア州北部地区の米国地方裁判所でBMPCを訴え、DHSの検査プログラムは693特許を侵害しておらず、また、特許は無効であるという確認判決を求めた。

DHSは、同じように非侵害と特許の無効の確認判決を求めて、途中で訴訟への参加を申し立てた。地方裁判所はDHSによる参加の申し立てを許可したが、これは、BPMCが、この訴訟で主張した同じ侵害行為を主張している強制的反訴を提出した後だった。

この訴訟は1998年の5月に裁判地が不適切であるとして却下された。

1997年の訴訟が却下された直後、BPMCは、DHSを特許権侵害で、カリフォルニア州南部地区の米国地方裁判所に訴えた。

DHSは、合衆国憲法修正第11条に基づく免責特権を主張したが、特許事件における免責特権に関する別の訴訟が、当時、米国最高裁判所で係属中だったため、BPMCは、最高裁判所の判決までは、自発的に訴訟を取り下げることができた。

フロリダプリペイド事件(Florida Prepaid Postsecondary Educ. Expense Bd. 対 Coll. Sav. Bank事件, 527 U.S. 627, 1999)で、最高裁判所は、特許権侵害の訴訟では州は免責特権を保持していると判示した。

2006年、BPMCは、1997年の訴訟と同じ裁判地でこの訴訟を提起した。DHSは免責特権に基づいて訴えの却下を申し立てた。地方裁判所は申し立てを許可した。BPMCは、DHSは免責特権の権利を放棄したと主張して、控訴した。

1997年の訴訟に参加したときにDHSは免責特権を放棄したということに、CAFCは同意した。

CAFCでの争点は、免責特権を過去に放棄したことが後の関連する訴訟に引き継がれうるか否かということであった。BMPCは、この訴訟は同一の当事者の間で行われており、同一の対象に関わっているため、以前の放棄は適用されるべきであり、また、1997年の訴訟では、裁判所が裁判管轄の主張を受け付け、DHSの参加を認めたため、DHSに対して免責特権の主張を禁ずるべきであると主張した。

CAFCは、免責特権の放棄を伴っている多数の判例を参照して、この訴訟と1997年の訴訟との間の関連性は不十分であると判示し、DHSに免責特権の保持を認めることは公平性や一貫性に欠けるというBMPCの主張の全てを却下した。

次に、CAFCは、DHSの主張は1997年の訴訟に参加したことと一貫していないため、DHSは免責特権の主張が禁止されているというBPMCの主張について検討した。

CAFCは、次のような禁反言に関するNew Hampshire 対 Maine事件(532 U.S. 680, 1895)の3つのテストを適用した。

(1)当事者の後の主張が前の主張と明らかに矛盾しているか。

(2)当事者は裁判所を説得して当事者の前の主張を受け入れさせることに成功したか。

(3)一貫しない主張を求めている当事者は、禁反言が適用されなかった場合に不公平な利益を得るか。

CAFCは、2番目と3番目の要件は満たされているが、フロリダプリペイド事件の最高裁判所判決は法上の重要な変更であるため、DHSの主張は明らかに矛盾しているとは言えないという、地方裁判所の判決を維持した。特に、フロリダプリペイド事件の前は、特許事件でDHSが免責特権を主張することができるか否かが不確定だったが、フロリダプリペイド事件の後は、DHSはそれにより防御する権利を取得したのであった。

BPMC判決は、免責特権の放棄が後の訴訟においてどの程度適用されるかについて検討している。

BPMC事件によれば、当事者と争点が同一であるだけでは過去にした免責特権の放棄が効力を有するには不十分であり、訴訟間に、より実質的な関連性があることや、訴訟において免責特権を選択的に適用することで、免責特権が不公平な利益を得るために使用されたことの立証が必要である。

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