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月刊The Lawyers 2007年12月号(第99回)

2. BMC Resources, Inc. 対
Paymentech, L.P.事件

No. 2006-1503 (Fed. Cir. September 2007)

- 複数当事者による特許権の共同侵害が成立するための要件 -

BMC事件においてCAFCは、ペイメンテック(Paymentech)社自体が特許工程の全てを実施していなかったこと、及び、他者の行為を指示もしくは統制していなかったことを理由とする、地方裁判所の非侵害の認定を支持する判決を下した。

BMCは米国特許第5,718,298号及び第5,870,456号特許の特許権者である。これらの特許は暗証番号(PIN)不要の借方勘定支払方法に関するもので、クレームはその方法を実行するために、複数の参加者による組み合わせの行為を明示的に要件としていた。

BMCは、特許方法の直接侵害及び侵害を誘引したとしてペイメンテック社を提訴した。ペイメンテック社は直接侵害を否定し、ペイメンテック社自体は方法特許の全てを実行してはいないことを理由に、非侵害の略式判決を求めて反訴した。

地方裁判所は、ペイメンテック社自体、または、ペイメンテック社と他の企業とが関与して、BMCの特許権を侵害してはいないと判断し、ペイメンテック社が申し立てた非侵害の略式判決を認容した。

これに対しBMCは控訴した。控訴審では、1つのクレームに対する複数の当事者による共同侵害の適切な基準が争点となった。

控訴審において、BMCは、CAFCの最近の判決であるOn Demand Machine Corp 対 Ingram Industries, Inc.事件(オン・デマンド事件)442 F.3d 1331 (Fed.Cir. 2006)を引用し、オン・デマンド事件で採用されたという、新たな「加担及び連携した行為」という共同侵害の基準を採用すべきとしてCAFCの説得を試みた。

オン・デマンド事件において、CAFCは、下級裁判所が陪審員に示した以下の関連部分は、法律の記述としての教示において欠陥はなかったと述べていた(注)

BMCは、ペイメンテック社が特許発明を実行するために金融機関と連携した行為を行ったので、オン・デマンド事件を考慮して、直接侵害の責を負うべきであると主張した。

CAFCはこの「加担及び連携した行為」の理論を採用することを認めず、BMCの主張を採用せず、オン・デマンド事件における個別の侵害の争点については全く分析していなかったので、オン・デマンド事件の判決が、地方裁判所の陪審員への教示を完全に採用したわけではなかったと説明した。

直接侵害は、クレームされた方法またはプロセスの1つ1つの工程を当事者が実行することを要件とするとCAFCは繰り返し述べた。特許工程の一部を実行したにすぎない当事者は、他の当事者らによって実行された侵害工程に関して責を負うことはできない。

しかしながら、当事者が他の当事者の行為を指示もしくは統制していた場合であれば、法律は他者の侵害行為に対する代償責任を課すものであるとCAFCは説明した。

BMCは、ペイメンテック社が金融機関にデータを提供したことから、要件となる指示もしくは統制があったと推測されると主張した。

CAFCは、BMCがその推測を裏付けるような十分な証拠を提出しておらず、また、ペイメンテック社と金融機関との間に契約上の関係を示した証拠もないことから、BMCの主張を採用しなかった。

ペイメンテック社がクレームの1つ1つの要素を実行していなかったし、他者に指示してもいなかったことから、ペイメンテック社は他者の行為による直接侵害の責を負うべきではない、と判断した。したがって、CAFCは、地方裁判所によるペイメンテック社の主張を認める判決を支持した。

CAFCはさらに、共同侵害を認定するための統制または指示の要件の基準は、状況によっては当事者に対し、侵害を防ぐための用意周到な契約を結ばせることになるという問題を生じさせることを認めた。

それでも、この問題は直接侵害に適用される規則を拡大するような重大な問題ではないとCAFCは述べ、単独の当事者による侵害をカバーする適切なクレームを作成すれば、共同侵害者の責任の範囲を拡張させなければならないような事態も未然に防止できるとした。

BMC判決は、適切なクレーム作成の重要性を明らかにした事件である。方法特許の権利行使を確実にするためには、直接侵害を立証できるように、単独の当事者の行為に焦点を当ててクレームを記載すべきである。

特許権の共同侵害を立証するためには、共同で特許権を侵害した他の当事者の直接的な行為を、責を負うべき当事者が統制もしくは指示したことを、原告が立証しなければならないからである。


(注) 『2以上の個人もしくは企業体による加担及び連携した行為に基づく侵害において、その個人もしくは企業体は共同侵害者であり、共同で侵害の責を負う』-同判決 1344〜5ページ

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