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月刊The Lawyers 2007年10月号(第97回)

1. Takeda Chemical Industries, Ltd. 対
Alpharpharm Pty.事件

Nos. 2006-1329, 2007 WL 1839698 (June 28, 2007)

- 化合物に関する発明の自明性の判断基準 -

この事件においてCAFCは、武田の特許は非自明であり、有効であるとした地方裁判所の認定を支持した。

武田は、従来の化合物よりも安全で毒性が低く、更には望ましくない副作用が少ない坑糖尿病化合物に関する米国特許第4,687,777号(以下777特許)の特許権者である。

アルファファーム(Alphapharm)は777特許にクレームされた化合物の後発医薬の製造及び販売を行うため、ハッチ・ワックスマン法に従い、米国食品医薬品局(FDA)に医薬品簡略承認申請(ANDA)を行った。

アルファファームは更に第4パラグラフの認証申請を行い、777特許でクレームされた化合物は発明時に既に当業者に自明であったことを理由に特許無効を主張した。それに対して、武田は提訴し、アルファファームの申請したジェネリック薬は777特許を既に侵害しているか、もしくは侵害する可能性があると主張した。

地方裁判所において、アルファファームは、777特許にクレームされた化合物は、「化合物B」から自明であると主張した。

地方裁判所は、化合物Bは777特許の化合物と類似する分子構造を持つと認定したが、化合物Bは糖尿病治療に使用される可能性のある先行技術に開示されている多くの化合物の候補の中のひとつにすぎず、化合物Bは毒性や体重増加等のようなマイナスの副作用があると認定した。

従って地方裁判所は、化学者には777特許にクレームされている化合物を作るために、化合物Bを改良しようとする動機がなかったと判断した。結果として、アルファファームは自明性を立証できなかったと地方裁判所は判示したのである。

過去の判例において、CAFCは、構造的に特許化合物に類似する公知の化合物がいつ自明性の立証を裏付けるかについて述べた。過去の判例においてCAFCは、特許化合物に対して異議を申し立てる者は、公知の化合物を改良する動機もしくは示唆の証拠を提示しなければならないと判示した。

アルファファームは、最近の米国最高裁判所のKSR International Co. 対 Teleflex Inc., 127 S. Ct. 1727 (2007)の判決に基づき、CAFCの構造的に類似する化合物の基準はもはや合理性はないと主張した。

KSR事件において、米国最高裁判所は、先行技術を組み合わせることの教示・示唆・動機は、自明性を立証する要件とはならないと判示した。

アルファファームは、KSR判決に基づき、777特許にクレームされている化合物を作るために、化合物Bを改良する示唆や動機を提示する必要はないと主張した。

CAFCはアルファファームの主張を認めず、化合物に関する事件では、自明性の証明には、特定の方法で公知の化合物を改良する示唆もしくは動機を提示することはいまだ必要であると判示した。

CAFCは、777特許にクレームされた化合物を作るために、化合物Bを改良する示唆もしくは動機をアルファファームが提示しなかったという地方裁判所の認定を支持した。

化合物Bは公知刊行物に記載された多くの化合物のひとつに過ぎず、また、抗糖尿病薬としての用途に挙げられた他の化合物よりも化合物Bが優れていると信じる理由がないことから、CAFCは、当業者の科学者は、抗糖尿病薬として改良もしくは使用するために化合物Bを選択しなかったであろうと述べた。

更に、化合物Bには毒性や体重増加などのマイナスの副作用があると知られており、むしろ化学者は抗糖尿病薬に使用するのを避けたであろうと考えた。

こうした理由から、CAFCは他の化合物と化合物Bの組み合わせを試みることは自明ではないと判断した。結果として、アルファファームが武田の777特許を無効とする試みは失敗に終わった。

武田事件では、自明性判断のために当事者が引例の組み合わせる教示・示唆・動機を示す必要があるとした一般原則を排除した最近の判例KSR 対 Teleflex判決にもかかわらず、CAFCは、化合物の事件の場合には一般原則がいまだ適用されると判示した。

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