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月刊The Lawyers 2007年9月号(第96回)

1. Monsanto Co. 対 McFarling事件

Nos. 2005-1570, 2007 WL 1502080 (May 24, 2007) (McFarling III)

- 損害賠償訴訟において
他の実施権者との間で確立している実施料を超える額の賠償額が認められるか -

McFarling III 事件において、CAFCは、ライセンシーが特許権者へ支払った額を優に上回る陪審員の損害賠償判決を支持した。

CAFCは、ライセンス料を確定したロイヤリティとみなすのを拒絶した地方裁判所の判決も支持した。判決は、侵害行為によって得た被告の利益と侵害行為が無かった場合における特許権者の利益の2つを根拠としている。

原告モンサント社(Monsanto Company)は特に遺伝子組み換え植物細胞に関する2つの特許を所有していた。これらの特許発明を用いて、モンサントは、グリホサート除草剤に耐性がある遺伝子組み換え作物の種子を販売していた。

除草剤と種子の両方を購入した農業経営者は、遺伝子が組み換えられていない種子よりも効果的に雑草を抑えることができた。モンサントはこれらの種子を様々な種苗会社を通じて販売しつつ、種苗会社には「技術契約」にサインするよう要求するとともに、種子購入者にはライセンス料を支払うよう要求した。

特に、購入者は購入した種子の第二世代を植えないことに同意させられた。ライセンス料の6ドル50セントに加え、種苗会社に対して種子ひと袋に対して19ドルから22ドルの支払いを要求した。

被告ホフマン・マックファーリング社(Hofman McFarling)は、1998年にモンサントより遺伝子組み換え大豆種子を購入した。ホフマン・マックファーリングは、技術契約にサインをし、所定額を支払った。しかしながら、彼は技術契約に違反して、第2世代の種子を1999年に栽培し、さらに2000年にも種子を栽培した。

ホフマン・マックファーリングの行為を把握したモンサントは特許侵害を理由にホフマン・マックファーリングに対して訴訟を提起した。

地方裁判所は、ホフマン・マックファーリングに対して、差し止めの仮処分を認めた。Monsanto Co. 対 McFarling 事件、 302 F. 3d 1291 (Fed. Cir. 2002) (McFarling I )。

CAFCも、地方裁判所のホフマン・マックファーリングに対する法的責任の判決を支持したが、履行不能な予定損害賠償額の規定に基づき判決を破棄し、実際の損害額を決定するために本件を地方裁判所に差し戻した。Monsanto Co. 対 McFarling 事件、363 F. 3d 1336 (Fed. Cir. 2004) (McFarling II )

McFarling II 以降、Monsantoは米国特許法第284条に従い、損害賠償として合理的な実施料(妥当なロイヤリティ)を要求し、種子ひと袋につき70ドルを損害賠償額として主張した。

ホフマン・マックファーリングは、6ドル50セントのライセンス料をロイヤリティとして妥当な額であると主張したが、陪審員は最終的に一袋につき40ドルが損害賠償額として妥当であると判断した。

ホフマン・マックファーリングは、モンサントに対する損害賠償額の裁定及び他の判決部分についても控訴し、裁判所の意見はMcFarling III に持ち越された。

合理的な実施料は侵害前に当事者間で仮に同意したロイヤリティであるとされ、通常、契約者との間で確定したロイヤリティは「合理的な実施料の最善の目安」とされる。なぜならば、推測の必要が排除されるからである。(McFarling III *4)

ロイヤリティが確定しているときは、特許権者が「実施に携わる他者へのライセンス供与を認め、被告に一律のロイヤリティに見合う行動を許可するとき」に額が確定したものとされる。(同判決)

CAFCは、ホフマン・マックファーリングの行為が合理的なライセンス契約者の行為と異なるという理由に基づき、ホフマン・マックファーリングの主張する、確定したロイヤリティを6ドル50セントとする主張を斥けた。

特に、ホフマン・マックファーリングが公認の種苗会社から種子を購入していないことは、仮契約の不履行にあたると判断した。

この主張の根拠として、モンサントは、McFarlingの第2世代の種子がMonsantoの評判を脅かす怖れがあったことを指摘した。なぜならば、Monsantoが種子の品質をコントロールする能力を失うとともに、新しい種苗会社と契約を締結する力を弱めるからである。Monsantoの損失利益を立証することは陪審員が考慮すべき課題であると言う主張をCAFCは支持した。陪審員にとって査定が困難だからといって阻止されるべきものではないからである。すなわち、「それらの利益に対する金銭価値を定めるのは難しいと判断したが、しかしその利益は、合理的な実施料である6ドル50セントを超えると陪審員が判断したことは公正である。」ということである。(McFarling III *6)

さらに、判決はホフマン・マックファーリングの得た利益に基づく正当な評価であるとCAFCは判断した。「(特許発明の種子から得られた)それらの利益のみに基づき、仮の交渉を想定すると、購入者が種子ひと袋につき40ドルのロイヤリティを支払うのが妥当である」(McFarling III *6)

従来の種子と比較して、CAFCは、McFarlingは明らかに雑草を抑制し、収穫量を増やしたと述べた。

モンサント判決によれば、製品について一律の契約をしている特許権者が、契約で確定しているロイヤリティの上限をどのようにすれば契約内容に基づいて回避できるかを明確にしたといえよう。

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