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月刊The Lawyers 2007年8月号(第95回)

3. Intamin Ltd. 対 Magnetar Tech., Corp.事件

Nos. 2005-1546, 2007 WL 1138489 (April 18, 2007)

- 独立クレームの権利範囲解釈に対する
従属クレーム及び明細書の記載の影響を扱った事件 -

インタミン(Intamin)事件において、CAFCは米国地方裁判所のMagnetar Technologies Corp.(以下、Magnetar)がIntamin, Ltd.(以下、Intamin)の米国特許第6,062,350号(350特許)の非侵害の略式判決を破棄した。

CAFCは、地方裁判所のあるクレーム要素の解釈を一部支持しながらも、地方裁判所が明細書中の一つの実施例に基づき、広いクレーム文言を狭く解釈しすぎていると判断し、クレーム解釈の一部を無効にした。

350特許は、ジェットコースターや遊園地にある他の乗り物に使用する磁気ブレーキシステムに関するものである。一般的に、磁気ブレーキは二組の磁石の間の隙間(ギャップ)を導体が通過する時に渦電流を起こす。これら渦電流は、順に磁気摩擦を起こし、導体に接続している車両の減速及び停止をさせる。

350特許はブレーキシステムにおける導体と磁石の特定の構成を記載し、その中の一つの構成は、運搬レールの方向に沿って、逆極性磁石同士が使用される磁石の記載があった。「例えば、レールの長さに沿って近傍磁石が通過する時、別の磁石が180度回転しながら通過する」また、別の構成として、スペーサや「中間物」で満たされた磁石要素の間に使用する隙間(ギャップ)の記載があった。

係争対象の装置はMagnetarのブレーキ製品であり、ハルバッハ配列として知られている近傍磁石の極性を90度ずつの回転させた構成の磁石を使用するものであった。

ハルバッハ配列は、磁束を片側だけに作り、その配列により磁石の片側だけに磁力が集中し、磁石の反対側は磁力がほぼキャンセルされる。例えば、ハルバッハ配列の片側の磁束は「冷蔵庫磁石」に類似しており、片面だけしか接着しないものであった。

CAFCは地方裁判所の350特許クレームの解釈を再考し、2つの磁石の間の「中間物」がそれ自体で磁石になりえるかどうかを分析した。

下級裁判所は、「中間物」は磁石にはなりえないと判断し、「要するに通常の意味は、狭い解釈をサポートし、明細書及び審査過程のどちらも通常の意味を変更するものではない」とし、「中間物」を「他の部材の間に位置する部材」を意味する語と解釈した。

CAFCは、地方裁判所のこのクレーム解釈が誤りであると判断し、「中間物」の文言は、単独で「他の部材の間に位置する部材」を意味すると指摘した。しかしながら、CAFCは更に「中間物」には、文脈上、磁化部材の追加的意味合いがあると判断した。

CAFCは、Phillips 対 AWH Corp, 415 F. 3d 1303 (Fed. Cir. 2005)判決を挙げて、「従属クレームはその独立クレームが関係する発明の範囲の解釈のための追加的内容を提供することができる」とした。

クレーム区別解釈論(claim differentiationの教義)に基づき、独立クレームは狭い従属クレームよりも、多く発明の主題を包含していると言える。

350特許の一つの従属クレームの文言では、「中間物」が非磁性体中間物も包含する様、補正し、「クレーム1のブレーキ装置の中間物は非磁性体である」とした。

CAFCはクレーム範囲の区別の原理に基づき、この従属クレームは、クレーム作成者が磁性体中間物と非磁性体中間物との違いを理解していることを示していると判断し、独立クレーム1が非磁性中間物を包含すると認定した。

しかしながら、クレーム範囲の区別の原理によらなくとも、CAFCは「広い文言のクレーム1全体が、非磁性体中間物に限定されるものではない」とした。

CAFCは、地方裁判所が350特許の1つの実施例で中間物は非磁性体として記載されていたことに重きを置いたことを批判した。先例であるSRI Int'l 対 Matsushita Electric Corp., 775 F.2d 1107, 1121 (Fed. Cir. 1985)判決を引用し、「明細書における狭い開示は必ずしも広いクレーム文言を限定するものではない」と繰り返したのである。

本件の場合は、CAFCは特許が特に磁性体中間物を全面的に否定したものではないと判断した。更に、SciMed Life Sys. Inc.対 Advanced Cardiovascular Sys. Inc., 242 F. 3d 1337, 1347 (Fed. Cir. 2001)判決を引用して、350特許の明細書における1つの記載が、発明全体の記載を限定するものではなく、ただ1つの実施例を記載しているのみであると判断した。

この基準によれば、この争点に対する地方裁判所の判断を無効とし、非磁性体中間物を含むようにクレーム解釈すべきだとして、本件を差し戻した。

CAFCは、更に地方裁判所の「固定された装置部分の長さを延長するように構成された導電体レール」の解釈を再考し、地方裁判所の「長さ」の解釈が「端から端までの範囲とし、幅との違い」を意味する解釈を支持した。

CAFCは、明細書に一貫して「長さ」が方向と反対の距離を暗示して使用されていると判断し、ジェットコースターの線路、導電体部分、磁性要素及びブレーキ距離等に関する「長さ」の使用方法のいくつかの例を挙げた。

確かに、方向に関しては、別の文言、例えば「along drop directions(平行降下方向)」等が使用されていた。

Intaminは線路の完全な長さを延長する導電体部分のそのような解釈は、クレームから特に特許明細書に記載された発明の実施例を読み取ることはできず、更には、明細書の実施例に記載されている導電体部分が格納されている客車もしくは可動装置については、クレームではカバーされていなくとも良いと主張した。

CAFCは、Intaminの主張を棄却し、特許権者は異なる実施例をカバーするような異なったクレームを草案することができるとし、「クレームはすべての実施例をカバーする必要がないとした」先例、Telemac cellular Corp 対 Topp Telecom, Inc., 247 F.3d 1316, 1326 (Fed. Cir. 2001)を挙げた。

CAFCは、これらの解釈から及び他のクレーム要素を理由に地方裁判所のMagnetarに対する略式判決を破棄し、CAFCによるこれらのクレーム要素の解釈に基づき、争点となったブレーキ装置が350特許を侵害するか否かの事実判断を行わせるために事件を差し戻した。

Intamin事件は、特許クレームを、(1)特許明細書及び(2)他の特許クレームの文脈において読み取ることの重要さを示していた。

CAFCは、一般的に、狭い従属クレームよりも独立クレームは発明の主題を多く包含するとの判断から、従属クレームは独立クレームのクレーム要素の解釈を援助するものと言及し、クレームの記載が認めない限り明細書に記載された狭い実施例が、広いクレームを限定するものではないと判示した。

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