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月刊The Lawyers 2007年4/5月号(第92回)

2. Voda 対 Cordis Corp.事件

Nos. 2005-1238, 2007 WL 269431 (February 1, 2007)

- 外国特許に対する外国での侵害行為に関する米国裁判所の裁判管轄権 -

原告であるジャン・ボダ(Jan Voda)博士は当初、Cordis Corporation(以下、「Cordis」)を相手取って米国連邦地方裁判所に特許侵害訴訟を提起した。ボダ博士は、心臓病に使用するカテーテルを概ね対象とした、3つの米国特許ファミリーをCordisが侵害したと主張した。

地方裁判所は、28 U.S.C. § 1338に基づく米国特許侵害の訴えに関して、第一審の裁判管轄権を有すると決定した。その後、ボダ博士は訴状を修正する動議を提出し、米国特許に対応する5つの外国特許に関して米国外で生じた特許侵害の主張を含めようとした。

地方裁判所は、ボダ博士の外国特許侵害の主張に関して、28 U.S.C. § 1367に基づき補足的な裁判管轄権を有すると決定し、ボダ博士による訴状の修正の動議を許可した。Cordisは、地方裁判所の決定に対して控訴した。

地方裁判所が§ 1367に基づいて対象の裁判管轄権を適切に行使するためには、§ 1367(a)に基づく補足的な裁判管轄権が存在しなければならず、かつ地方裁判所は§ 1367(c)に基づいて裁判管轄権を行使する裁量権を適切に使用しなければならない。

§ 1367(a)によれば、請求が「合衆国憲法の第3篇に基づいて、同一の事件または論争の一部を構成している」限り、第一審の裁判管轄権外での訴えを地方裁判所が審理することを認めている。

地方裁判所は、この条項を§1367(a)に基づき審理される請求は、「対象事案と核心が共通する」訴えであると解釈した。地方裁判所はしばしば、補足的な裁判管轄権を行使し、何らかの状況において、合衆国の法律及び外国の法律が適用される訴えを検討する。

しかしながら、CAFCは、§1367(c)に基づく補足的な裁判管轄権を行使することに関して地方裁判所が裁量権を濫用したと判断した。そして、§ 1367(a)に基づく補足的な裁判管轄権が存在するか否かの判断は差し控えた。

CAFCは、本件に関して、外国法の尊重、訴訟経済、利便性、公平性、及び他の例外的な状況を考慮した結果、地方裁判所が補足的な裁判管轄権を行使したことは裁量権の濫用であったと判断した。

外国法尊重の原則は、外国の立法、司法、及び行政の行為に対する認識に国内の裁判所がどのようにアプローチするかを、そのような行為に関連する事件が発生した際に事前に規定するものである。

CAFCは、国際的な義務、利便性、米国民の義務、及び他の外国政府の権利に対する損害を考慮することに言及し、外国法の尊重を行使することが外国特許侵害の訴えに関して米国の裁判管轄権を拡張することを支持しないという判断の一助とした。

CAFCは第1に、外国特許侵害の訴えを審理する国際的な義務は存在しないと判断した。工業所有権の保護に関するパリ条約(以下、パリ条約)、特許協力条約(以下、PCT)、及び知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(以下、TRIPS)を含む、知的所有権に関する多様な国際条約に米国は加入していると、CAFCは述べた。これらの条約は、合衆国憲法下では、「国の最高法」である。

パリ条約、PCT、TRIPSのいずれも、「特定の国が他国の特許を審理することを意図も許可もしていない」。そこでCAFCは、地方裁判所が外国特許に関して裁判管轄権を行使すると、条約の下での米国の義務を逸脱することになりかねず、それゆえ、「そのような行使は慎重に熟慮しなければならない」と強調した。

CAFCはまた、米国の裁判所が外国特許侵害の訴えを審理したとしても、利便性は向上しないと判断した。個々の特許侵害の訴えを解決することに関しては外国の裁判所の方がより適任かつ効率的であり、5つの外国特許侵害の訴えによってボダ博士の米国特許侵害の訴えが影に隠されてしまうので、外国特許侵害の訴えを審理することは、司法資源の浪費になるとCAFCは判断した。さらに、外国特許法の専門家を用意するコストは大きな負担となる。

CAFCはまた、事件に関して複数の外国法が存在すると、陪審員は混乱してしまうであろうと警告した。最後に、仮に複数の米国及び外国の特許を1つの事件として審理することがより効率的であったとしても、その判決を国際的に執行する条約は存在しないので、判決を執行することは困難であろうと、CAFCは述べた。

地方裁判所が裁判管轄権を拡張しなかったとしても、依然として米国民の権利は適切に保護されるであろうと、CAFCは判断した。その理由として、ボダ博士は個々の外国の裁判所で外国特許の侵害及び権利行使を訴えることができると、CAFCは述べた。

CAFCはまた、外国特許侵害の訴えにまで裁判管轄権を拡張すると、外国政府の権利に損害を与えることにもなりかねないと判断した。なぜなら、米国の裁判所が個々の特許に関して裁判管轄権を行使することを外国政府が望んでいるという事実は存在しないからである。

最後に、外国特許侵害の訴えに関して補足的な裁判管轄権を行使すると、「国家行為理論(act of state doctrine)」の下、公平ではないとCAFCは判断した。この理論では、外国の裁判管轄権内におけるその外国の主権の行使は米国裁判所において有効かつ法的拘束力を持つものである。

CAFCは、外国の主権に基づいて許可された特許は有効であると判断した。それゆえ、国家行為理論の下では、米国裁判所は外国特許の有効性を判断できない。とすると、Cordisのような侵害被疑者にとって不公平になるとCAFCは述べた。というのも、特許無効による防御は特許侵害に対する防御としてほとんど必ず使用されるからである。

本件では、CAFCは次の点を強調した。即ち、外国特許に対して補足的な裁判管轄権を拡張するという裁量権を行使するためには、地方裁判所はあらゆる潜在的な根拠を常に吟味しなければならない。

しかしながら、複数国で特許を有する者は、CAFCが次の可能性を残したことにも注目すべきである。「状況が変化した場合」、例えば、外国法の尊重、訴訟経済、利便性、及び公平性に関する結論を変化させるような、新たな国際平和条約に米国が加入したり、更なる発展がある場合などは、補足的な裁判管轄権を行使することが適切になる場合もあるであろう。

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