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月刊The Lawyers 2007年4/5月号(第92回)

1. Propat Int’l Corp. 対 Rpost, Inc.事件

Nos. 2006-1222, -1223,-1270, 2007 WL 14688 (January 4, 2007)

- 侵害訴訟におけるライセンシーの原告適格 -

Propat Int'l Corp.事件において、原告のPropat International Corporation (以下、Propat)は、RPost, Inc.、Rpost US Inc.、及び RPost International Ltd.の三社(合わせて以下、Rpost)を米国特許第6,182,219号(以下、219特許)を侵害しているとして提訴した。

219特許の発明者はAuthenticational Technologies Ltd.(以下、Authentix)に発明を譲渡していた。Authentixはその後、Propatに対し、219特許の特定の権利をライセンス契約していた。

争点はPropatが特許侵害を提訴する原告適格があったか否かである。地方裁判所は、Propatが「特許の全ての権利を」所有していないことから原告適格がなく、単なる最小限の権利を持つライセンシーと判断した。

米国特許法第281条に拠れば、特許侵害訴訟を提起できるのは「特許権者」のみである。米国特許法第100条(d)項に基づくと、「特許権者」はその特許が発行された特許権者のみではなく、特許権者からの権利の継承者をも含む。つまりは譲受人等を含む。CAFCの判例から、特許権者から「全ての実質的な権利を」譲り受けた者であれば、譲受人は有効な特許権者と判断され、侵害訴訟を提起できる。

Authentixは219特許の特許権自体について留保していたが、Propatは、Authentixとの間の契約で、AuthentixがPropatに対して実質全ての権利を付与したと主張した。契約では、AuthentixはPropatに対して第三者に対する特許のライセンス付与を認めているし、ライセンス契約を締結すること及び侵害者を提訴することも認めていた。

ライセンスや訴訟を開始する前に、PropatはAuthetixに相談し同意も得なければならず、Authentixはそれに対して、理由なく判断を保留にしたり、遅らせたりすることはできないと取り決められていた。

PropatはAuthentixの同意なしでは実行ができなく、さらにはAuthentixは自由に判断を保留できるとの義務を前提として、権利を譲受していた。

また、契約上、AuthentixとPropatはライセンス収入及び訴訟や和解に必要な補償金を両当事者が分かち合うことになっていた。契約上ではさらに、Propatが契約違反をした場合、倒産した場合、ある一定のライセンス収入が達成できなかった場合、もしくは特許権の行使またはライセンスが積極的に行なわれていない場合は、契約を終了することを認めていた。

Authentixはさらに、裁判所からの要求があれば、Propatが提訴した際には共同提訴人になることに同意していた。しかしながら、そのような場合は、PropatはAuthentixのための弁護士費用を支払うことが決められていた。

RPostはPropatが特許権を持たない単なる「最小限の権利を持つライセンシー」に過ぎないため、Propatは特許侵害訴訟のための原告としての原告適格がないと主張していた。

地方裁判所は、RPostの主張を認め、Propatは発明を自ら製造、使用、販売する権利はなく、「単に第三者に特許権を行使するか、あるいは発明を使用、製造もしくは販売するためのライセンスをオファーする権利」があっただけだと判断し、その発明に基づく新たな特許を求める権利を留保し、発明を実施する権利を留保していたと推測されるから、Propatに排他実施権はないとした。

最後に地方裁判所はAuthentixの自由裁量に基づき同意を差し控えることができることからも、Propatが、契約上譲受した権利は完全にAuthentixにより制限されていると判断した。

CAFCは契約書の様々な規定に対して地方裁判所の判断に同意し、Authentixが219特許の特許権自体を留保していたことが明確に契約書に規定されていることに注目した。

Authentixはさらに219特許の維持年金の支払い義務があり、さらに特許権者はAuthentixに留保されていることが規定されていた。AuthentixはさらにPropatの業績が一定の基準に満たない場合は契約を解消する権利を持っていた。

裁判を解決する手掛かりをもたらす程ではないが、CAFCはそれでもAuthentixが特許権を明確に留保している意思表示のひとつであると判断した。

CAFCはAuthentixが219特許の経済的持分を保有しつつも、特許権に影響する決定をコントロールする実質的手段を持っていることに注目し、その判例において、商業的な実施から得られる利益の一部を得る権利を特許権者が留保している場合には、特許の実質的権利の留保ではないと判断していた。

しかしながら、本件では、CAFCはPropatのライセンス及び219特許の行使に対する義務に照らして、Authentixが219特許による利益を実質的にシェアする権利を留保していることは、特許権の留保と同一であると判断した。

さらに、CAFCは「特に重要」と判断したのはAuthentixが契約に基づきPropatの権利の譲渡を自由に拒否することができ、それも裁量で行える点であった。CAFCによれば、契約に基づき譲渡の自由に制限を加えることができることは「強力な指示者」であり、Propatに実質的に全ての権利が譲渡されていなかったと判断した。

Authentixが、Propatにライセンスや紛争の相手を通知する義務を課し、しかも、そのライセンス、紛争の決定を合理的な理由もなく拒否できる権利を有していることは、さらに、通常、特許権の「実質的に継続的なコントロール」を留保していたことを示すものであるとした。

Propat判決では、CAFCはライセンス契約における「原告適格」条項は、自動的に、自分の名前で侵害訴訟の提起を起こす原告適格があると言うわけではないと判断した。

ライセンシーにその特許の全ての実質的権利が譲渡されていない限り、特許権者はライセンシーが自己の名前で特許の侵害を求める原告適格がないことになるので注意しなければならない。

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