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月刊The Lawyers 2007年1月号(第89回)

1. Conoco, Inc. 対
Energy Environmental International, L.C.事件

Nos. 2005-1363, -1461 (August 17, 2006)

- クレームにおける「consisting of」と権利範囲の解釈 -

Conoco事件においてCAFCは、「水とアルコールの混合液」、「〜から構成される(consisting of)」、「安定した」という文言に関する地方裁判所のクレーム解釈を支持した。CAFCはさらに、争点の特許の1つに関し、被告のEnergy & Environmental International (以下、EEI)が文言上の侵害をしていない、という地方裁判所の一部略式判決は妥当であったと結論付けた。

さらに、文言上の侵害に関する残りの争点および均等論に基づく侵害に関しては、原告であるConocoの主張を認めた地方裁判所の判決は妥当であったと認定した。本件は、米国特許第5,244,937号(以下、937特許)、および第6,172,151号(以下、151特許)(以下、合わせて、「争点の特許」と呼ぶ)に関する事件である。

争点の特許は、燃料添加物の製造工程に関するものであった。「抵抗減少剤(以下、DRA)」と呼ばれる添加物は、くみ上げ作業における抵抗を減少させるために石油やガスパイプラインに注入されるものである。937特許のクレームは、DRAが水もしくは水とアルコールの混合液体内に懸濁される「安定した非凝結の懸濁に調合する」工程を示していた。151特許のクレームは、安定した非凝結の懸濁にするために、ポリマー粒子を脂肪酸ワックスの分離剤を用いてアルコール、あるいはアルコールとグリコール内で懸濁させる工程について示していた。

本件では、「水とアルコールの混合液」、「〜から構成される(consisting of)」、「安定した」というクレーム文言の解釈が争点となった。さらに、EEIの製品が、151特許の「脂肪酸ワックス」という限定を均等論上侵害しているか否かについて争われた。

EEIの製品は、他の含有物に混ざって、8〜15%の水、80〜・31%の工業用アルコール、MIBKとして知られるアルコールの変性剤、およびC30+として知られる炭化水素を含有しており、それらが混合して「分離剤」として機能していた。地方裁判所は、水およびアルコール以外のEEI製品の組成物は「不純物」であると認定した。

2004年4月1日、テキサス南地区地方裁判所は、争点のクレーム文言の解釈に関する見解を示した。その後、EEIは151特許の非侵害の略式判決を申し立てた。裁判所は、EEIは151特許を文言上侵害していないと認めたが、EEIの製品が均等論上侵害しているか否かに関しては真正な争点があると判示した。

ベンチトライアルの後、裁判所は、937特許をEEIの製品は文言上侵害しており、151特許のクレーム1〜3については、均等論に基づき侵害していると判決した。裁判所はEEIの侵害品の販売を禁止した。差止命令は後に、元々販売を禁止された製品と見かけ上異なっていただけの製品も含めるよう補正された。CAFCは訴因の全てについて地方裁判所の判決を支持した。

第一に、CAFCは、「水とアルコールの混合液」という文言を「無視できない量の水とアルコールを含む懸濁材料」を意味するという地方裁判所の解釈を支持した。クレーム自体には侵害品の混合物中に存在しなければならない水の量に関する特定の限定は含まれていない。EEIは明細書中の文言に基づき、Conocoの特許は少なくとも30%の水を含む混合物に範囲を限定していると主張しCAFは、明細書中の文言は発明の好適な実施例を述べたものであり、クレームの範囲を限定するものではないと判示した。

第二にCAFCは、地方裁判所による「〜から構成される(consisting of)」という移行句の解釈を支持した。「〜から構成される(consisting of)」という文言は特許の分野における専門用語である。裁判所は、「〜から構成される(consisting of)」という文言は、クレーム範囲を限定する文言であるが、組成物もしくは「発明とは関係ない付加的な組成物もしくは工程」と関連している不純物を限定するものではない、と説明した。

EEIは自社の添加物であるMIBKは、混合物内でアルコールを変性させるために意図的に添加されたものであるから、この分析の対象となる「不純物」ではないと主張した。裁判所は、MIBKは発明において何の効果もなく、たとえ実際に「水とアルコールの混合物」に意図的に添加されていたとしても、MIBKは不純物であることを認めた専門家証言に注目した。CAFCは、EEIの工程にその物質を使用することは、EEIの製品を937特許の範囲外にすることにはならない、とした地方裁判所の認定を支持した。

第三にCAFCは、「安定した」という文言を「その特性を保った状態で長距離の船による輸送を可能にした」としたEEIの解釈を一部認めたが、その文言を「DRAがパイプライン中に添加された時点で安定した」と意味するとした地方裁判所の見解も誤りではない、と認定した。代わりに裁判所は、パイプライン注入時に安定した懸濁状態であることは、船で長距離輸送するに十分な安定性が備わっていることであるから、2つの解釈は一致するものであると述べた。CAFCは、地方裁判所の解釈は、輸送はクレームの限定要件ではないことを黙示的に認めていると認定した。

第四に、CAFCは、均等論に基づき、EEIの「炭化水素ワックス」の組成物は「脂肪酸ワックス」を含む151特許の限定を侵害している、とした地方裁判所の認定を支持した。審査手続きにおいて、補正により「脂肪酸ワックス」という限定がクレームに加えられた。EEIは、この限定はクレームの範囲を狭義にするために加えられたものであるから、Conocoは審査経過禁反言により発明の主題の均等物を主張することはできないと主張した。Conocoは、その限定は「明らかな欠落を訂正する」ために加えられたにすぎないと主張した。CAFCは地方裁判所およびConocoの主張を認め、その限定は特許性を目的として追加されたものではなく、Conocoが均等論に基づきクレームを主張することを妨げるものではない、と判断した。

151特許の侵害を判決した後に、地方裁判所はEEIに販売を禁止した。その後、EEIはC30+ワックスの代わりに、ポリエチレンワックスを使用した類似製品を製造した。地方裁判所は差止命令をこの新製品も含めるよう拡張した。CAFCは、新たなワックス分離剤は侵害品を見かけ上変更したにすぎないと認定し、これを支持した。

本件は、「〜から構成される(consisting of)」という専門用語は、組成物に一般的に混在している不純物の存在を、たとえそれらの「不純物」が意図的に添加されたとしても、クレームされた混合物の範囲から限定するものではないことを示した。本件はまた、故意ではない記載不備を訂正する目的の補正は、必ずしも均等論を主張する特許権者の権利を放棄するものではないことを示した。

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