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月刊The Lawyers 2006年9月号(第85回)

3. Lava Trading, Inc. 対
Sonic Trading Management,
LLC and Royalblue Group PLC事件

Nos. 2005-1177, -1192 (April 19, 2006)

- 事実審裁判におけるクレーム解釈の有効性を扱った事件 -

Lava Trading事件において、CAFCは、地方裁判所によるクレーム解釈を破棄した。地方裁判所の解釈は、特許に係るソフトウェアによってエンドユーザに「配信」され「表示」される情報の範囲について広い見方をするものであり、トレーダーの証券に関するオーダーブックの単なるサブセットではなく全体を含むものであった。

係争特許の米国特許第6,278,982号は、多様な取引システムから証券情報を集約して統合する、証券業界に関連するソフトウェアをクレームしている。このような情報には取引情報及び発注情報が含まれ、エンドユーザにとっての利益は、所与の証券又は複数の証券のための代替取引システムから抜粋された情報を提供する、実質的にワンストップの情報源となる点である。

特許権者であるLava Tradingは、特許権の侵害を理由に被告を訴えた。被告は、侵害を否認した。そして、特許が無効であり権利行使不可能であるという確認判決を求めて、反訴した。最終的に、裁判所は非侵害の終局判決を出した。その後、Lavaは出された終局判決に対して控訴した。一方、特許権を行使不可能とすることに関する被告の反訴は、依然として地方裁判所に係属していた。 特許における限定の意味に関する議論は、統合されたオーダーブックをトレーダーに「配信」して「表示」することの解釈に関するものであった。具体的には、クレームは要部として次のものを備えていた。

「証券または商品(a security or commodity)のトレーダーに対し、2以上の代替取引システムから取引情報を提供するデータ処理方法であって、・・・統合されたオーダーブックを前記トレーダーに配信する工程と・・・前記統合されたオーダーブックを前記トレーダーに表示する工程とを備えることを特徴とする方法」

地方裁判所は、マークマン・ヒアリングを行ったが、正式なクレーム解釈の命令を発行しなかった。ヒアリングの終了に際して、裁判官は、「配信」及び「表示」の限定はトレーダーのための統合されたオーダーブック全体に適用されるものであると解釈したことを明らかにした。

CAFCは、地方裁判所のこの判断に同意せず、この解釈は、統合されたオーダーブックのサブセットにのみ適用されるというクレームの単純な意味と矛盾すると考えた。

また、CAFCは証券または商品を表現するためにクレームが「a」という語を使用していることを強調した。CAFCはまた、明細書が、統合されたオーダーブックのサブセットのみに対する情報の「配信」及び「表示」を明確に説明する特定の実施形態を記載していると認定した。従って、CAFCは、地方裁判所によるクレーム解釈を破棄した。

より重要なことに、CAFCは、不十分な記録に基づく助言的な意見を述べる以上のことは、実質的に不可能であると判断した。これは、係属中の権利行使不可能とする反訴及び、地方裁判所が特許製品及び侵害被疑製品間の包括的な比較を全く行っていないことによる事実関係の記録不足とに起因するものである。

CAFCはさらに、事実に対する熟慮がなされずに単なる法律問題としてクレーム解釈が扱われているために、両当事者は、地方裁判所においてはある方法でクレーム解釈を示し、控訴裁判所(CAFC)では他の方法でクレーム解釈を示すことができてしまうとの見解を示した。

地方裁判所が、不完全な事実関係の記録に基づいて事実審における判決を言い渡したことの影響と結果に注意するように、CAFCはここで我々に警告した。とりわけ、CAFCは、次のように述べた。

「侵害被疑製品に関する知識無しでは、検討対象の侵害判断の正確性を評価することは不可能であり、正確なクレーム解釈のための適切な事実関係が不足している。『事実審裁判所は、クレームに侵害被疑製品またはプロセスが含まれるのかあるいは除外されるのかを明らかにする目的でクレーム解釈を行うことで、最終的な侵害判断についての早まった判断をすべきではなかった。そして、その製品または手順に関する知識は、侵害判断に関する最初のステップであるクレーム解釈のための、意味のある事実関係を提供する』」

クレーム解釈に伴う検討事項を専ら「本質的証拠」に限定するという過去の判例にいくらか矛盾するように思えるかもしれないが、Lava Tradingのケースにおける判決は、次のことを示唆している。

すなわち、問題となっている製品又は手順に関する実際の分析に言及せずに孤立してクレーム解釈が行われる場合、クレーム解釈は、何ら意味のある方法では行われ得ない。

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