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月刊The Lawyers 2006年9月号(第85回)

1. Parental Guide of Texas, Inc. 対
Thomson, Inc.事件

No. 2005-1493 (April 21, 2006)

- 米国特許法第284条に基づくロイヤリティの認定に関する事件 -

Parental Guide of Texas事件において、CAFCは、当事者間の譲渡及びライセンス契約は米国特許法第284条に基づく「訴訟ロイヤリティ」を規定するものではなく、したがって、被告の契約に基づく付帯条件支払は不要である、とした地方裁判所の判決を支持した。

Parental Guideは関連する訴訟において、Thomsonおよびいくつかの企業を特許侵害で提訴したが、Parental GuideとThomsonは譲渡及びライセンス契約(以下、「契約」)に従って和解した。この契約の中には、裁判がParental Guideにとって「有利に終結」したならば、Thomsonは米国特許法第284条に従った「訴訟ロイヤリティ」に基づく付帯条件支払をしなければならないことが盛り込まれていた。

米国特許法第284条は、「原告に有利な判決に基づいて、裁判所は、その侵害を補償するのに十分な賠償額を裁定しなければならない。ただし、その賠償額は、いかなる場合においても、侵害者による発明の実施に対する適正なロイヤリティを下回ってはならない」と規定している。

この条項はさらに、賠償額は陪審員または裁判所によって決定されなければならない、と規定している。

本件はさらに、連邦民事訴訟規則第68条とも関係する。第68条は、裁判開始の10日前までに、ある特定の賠償額による自分にとって不利な判決を受け入れることを、被告が申し出ることができることを規定している。もし原告が申し出を受け入れた場合、事務官は判決を登録する。また、もし原告が申し出を拒絶して、被告が当初申し出た賠償額よりも低い額を認定した被告に不利な判決が最終的に出された場合には、原告は申し出がされた後に発生した裁判費用を支払わなければならない。

Parental Guideは、他の被告であるMitsubishiからの第68条の申し出を受け入れ、米国特許法第284条に基づくロイヤリティをテレビ1台につき1.15ドルとする最終的な判決が下された。

数週間後、Mitsubishiは最終判決について控訴し、MitsubishiとParental Guideは和解の条件について再度交渉した。両者は最終的に、両者間では「訴訟を起こさない約束」により合意し、Mitsubishiは現金を支払う代わりに自社の製品を小売価格でParental Guideに提供することで、不利な判決を受け入れることに合意した。

これにより、最終判決は取消不可能で不服申し立てできないものとなった。次にParental Guideは、その最終判決において決定されたつき1.15ドルというロイヤリティの金額に基づき、Thomsonに対し付帯条件支払を要求した。

Thomsonは、第68条の申し出を受け入れることは、「和解」であって、裁判が「有利に終結」したことにはならないと主張した。さらにThomsonは、最終判決において設定されたロイヤリティの額は、契約条件に基づく「訴訟ロイヤリティ」ではないと主張した。地方裁判所はThomsonの主張を認め、付帯条件支払は不要であると決定した。

CAFCは地方裁判所の判決を支持し、「基となる裁判において「訴訟ロイヤリティ」は明示的に決定されておらず、したがって、Thomsonは付帯条件支払をする必要はない」と述べた。

その理由として、まず第一に、契約によって意図された訴訟ロイヤリティは、米国特許法第284条が適用可能な法律にしたがって決定されるロイヤリティである。適正なロイヤリティの額の決定に関する判例、Georgia-Pacific Corp. 対 U.S. Plywood Co.事件、318 F.Supp. 1116, 1120 (S.D.N.Y. 1970)において定められた要素を特に考慮して、CAFCは、第284条に従って、裁判所もしくは陪審員が損害額を算定しなければならないと判決した。

第二に、当事者が最終的にどのように訴訟を和解させるかに関する第68条の下では、和解金額あるいはロイヤリティ額は当事者間で決定される。したがって、この係争においてロイヤリティ額を決定したのは当事者であって裁判所や陪審員ではなかったのであるから、米国特許法第284条の要件に適合する「訴訟ロイヤリティ」ではない、と認定した。

これに伴い、Parental GuideとThomson間の契約に基づき、Thomsonが、Parental Guideへの付帯条件支払を求められることはない、と判決した。

本件は、差止による救済をしないことから特許事件で適用されることは稀な、連邦民事訴訟規則第68条を適用している点で興味深い事件である。訴訟ロイヤリティの支払を意図した和解契約は、その金額の算出方法を明瞭にしなければならない。

もし当事者が、特許法第284条の要件に適合しないロイヤリティ額まで適用範囲に含めたいならば、後々問題とならないように契約書中に明瞭に記述すべきである。

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