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月刊The Lawyers 2006年8月号(第84回)

1. Bicon Inc. & Diro, Inc. 対
The Straumann Co. &
Institut Straumann AG事件

No. 2005-1168 (March 20, 2006)

- クレームのプリアンブル部が限定解釈の根拠となる場合について -

Bicon事件で、CAFCは、インプラントの上に歯冠をかぶせるときに歯冠の土台が患者の歯肉線の真下に合うようにするために、インプラントの周りに空間を確保するように設計されたプラスチックカフに関する特許を審理した。(米国特許第5,749,731号、以下731特許) 特許権者であるDiro, Inc.,及び実施権者のBicon, Inc.,は、マサチューセッツ州地区の地方裁判所にThe Straumann Co.とInstitut Straumann (両者合わせて、「Straumann」と呼ぶ)に対する訴訟を提起した。

この訴訟では、歯科インプラントのための歯冠の製造にStraumannが使用している二つの装置を販売する行為が問題となった。

訴状によると、Straumannがクレームの主題を取り入れられた製品を販売した行為は731特許の少なくとも一つのクレームを侵害するものであると、DiroとBicon(両者合わせて、「Diro」と呼ぶ)は主張した。

地方裁判所は、クレームを解釈した後で、下記理由に基づきStraumannは非侵害であるとの略式判決を下した。(1)争点となったクレームのプリアンブルは、クレームの主要部分であり、クレームを限定するものである。(2)Straumann製品の2つの装置には、争点となったクレームの要素のうち、一つの要素が含まれていなかった。(3)争点となったクレームの他の要素も、これら2つの装置には含まれていなかった。(4)Biconは、独占排他的な実施権者ではないため、当事者適格が欠如しているという理由で、Biconに関しては訴えが棄却されるべきである。

控訴審で、CAFCは、地方裁判所の一つ一つの判断を全て取り上げ、いずれも支持した。Diroが、クレームはもっと広く解釈されなければならず、プリアンブルの文言によって限定解釈されるべきでないと主張したのに対して、CAFCは、争点となったプリアンブル及びクレームの本文の両方に、装置の詳細な記載及び明確な特徴の引用がされていると判断した。

特に、Diroは、クレームに「エマージェンス・カフ部材」の記載があるが、エマージェンス・カフ部材と他の特徴、例えば「橋脚歯(アバットメント)」との組み合わせを記載したのではないと指摘した。しかしながら、CAFCは、クレームには橋脚歯の詳細な物理的特性の記載が包含されており、橋脚歯にのみ限定解釈されるようにカフが定義されていると判断した。Diroの理論によれば、クレームには、カフの特徴だけが記載されているにすぎず、橋脚歯の引用は単にカフの使用目的を記載したにすぎないとのことであるが、CAFCは、橋脚歯の特徴と引用の詳細さのレベルからすると、この理論は受け入れられないと述べた。

すなわち、Diroの主張は、クレームにおいては全ての文言が意味を持つと言う本質に反するのみならず、クレームの本文に包含されている限定表現を無意味なものにしてしまうので、採用できない。

この点に関して、CAFCは、プリアンブルに包含される文言の取り扱いについて審理した。しばしば、プリアンブルの文言は非限定的な文言であると言われているが、事実、取り扱いが間違いでない限り、プリアンブルの文言を限定的に扱うことは珍しくないとCAFCは説明した。

その発明にとって重要となる本質的構造がプリアンブルに記載されている場合、もしくは、クレームの記載者がその発明の主題をプリアンブルと本文に記載することを選択した場合は、当該発明は本文及びプリアンブルによって定義される。

CAFCは、争点となったクレームのプリアンブルには、その発明の目的またはその使用目的を説明するには必要以上の記載が存在し、かつ、クレームの本文には発明が完全には記載されておらず、むしろ本文は、プリアンブルに記載された特徴を再度引用しているにすぎないと判断した。

プリアンブルには、発明の構造的特徴が記載されていたのである。総合的に見れば、これらの事実が、CAFCの判決の証拠となった。また、クレームの記載者がクレームで発明の主題を定義する際に、プリアンブルとクレーム本文の両者を意図的に使用したと判断した。

これらの状況は、プリアンブルが単に発明の目的・機能を定義するのに必要となる装置の部分を説明したと判断されたC.R. Barc, Inc. 対 M3 Systems, Inc., 157 F.3d 1340 (Fed. Cir. 1998)判決とは状況が異なると、CAFCは判断した。

地方裁判所による非侵害の根拠をすべて扱うことなく、CAFCは、下級裁判所の判決を支持し、争点となった装置は文言上も非侵害であり、均等論上も非侵害であると判断した。

CAFCは、争点であるBiconが独占排他的な実施権者であるかどうかの証拠も審理した。その結果、Biconは、単なる非独占排他的な実施権者にすぎず、訴訟についての当事者適確を欠如していると、CAFCは判断した。

Bicon判決で、CAFCは、クレームのプリアンブルはクレームされた発明の目的もしくはその使用目的を単に説明することとなる以上に意味を持つ場合は、クレームを限定することがあることを確認した。

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