1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2006年
  4. 3. Golden Blount, Inc. 対 obert H. Peterson Co.事件

月刊The Lawyers 2006年6/7月号(第83回)

3. Golden Blount, Inc. 対
obert H. Peterson Co.事件

Nos. 2004-1609, 2005-1141, -1202 (February 15, 2006)

- 故意侵害の成立と弁護士の鑑定 -

本判決において、CAFCは、特許権者による弁護士の鑑定の要求行為について審理した。

Golden Blount は米国特許第5,988,159号(以下、159特許)を所有しており、Robert H. Peterson Co.(以下、Peterson)に対し、特許侵害訴訟をテキサス北地区地方裁判所に提起した。

159特許は暖炉の部品である改良型ガスバーナーに関するもので、Petersonは暖炉の部品であるガスバーナーを製造・販売していた。審理の後、地方裁判所はPetersonによる159特許の故意侵害を認定し、Golden Blountの損害額及びその弁護士費用の支払いを命じた。Petersonは地方裁判所の判決をCAFCへ控訴した。

1999年、Golden BlountはPetersonに対し、159特許が発行され、その特許がPetersonの販売するガスバーナーによって特許侵害を受けていることを伝えるレターを送った。

Petersonは、159特許について特許弁護士のWilliam McLaughlinに相談し、159特許にクレームされた発明は、その業界で20年以上前から知られている技術であることをMcLaughlinに伝えた。

この情報に基づき、McLaughlinはPetersonに対し、159特許は無効であるか、もしくはPetersonの提訴された製品による侵害は無いと、口頭で意見を述べた。

この意見を述べた時点で、McLaughlinは、提訴された製品や特許の審査履歴、あるいは何の先行技術も検討していなかった。

特許侵害訴訟が提起された後に、McLaughlinはPetersonに対し、2度にわたり口頭で追加の意見を述べた。

2001年2月、McLaughlinは159特許及び提訴された製品の写真と図面を検討した。その結果、McLaughlinは、提訴された製品は159特許を文言上侵害しておらず、159特許のいくつかのクレームは無効であると、口頭で意見を述べた。2001年5月、McLaughlinは159特許の審査履歴を初めて検討した。

その結果、McLaughlinは、提訴された製品は159特許を均等論に基づく侵害をしておらず、159特許の全てのクレームは無効であると、口頭で意見を述べた。

判決において、地方裁判所は、PetersonがMcLaughlinから書面による鑑定書も受け取っていないこと、また、McLaughlinが特許の審査履歴や提訴された製品を検討せずに口頭による意見を述べていた点に注目した。その結果、地方裁判所はMcLaughlinの全ての鑑定は無効であると認定した。

CAFCにおいて、Petersonは弁護士の鑑定を求める義務は無かったと主張した。さらに、Petersonが地方裁判所の159特許の故意侵害の判決に関し弁護士の鑑定を受けたかどうかを考慮する際に、地方裁判所はKnorr Bremse Systeme Fuer Nutzfahrzeuge GMBH 対 Dana Corp.事件、383 F.3d 1337(Fed. Cir. 2004)(大法廷判決)の判例に沿った判断をしなかった、と主張した。

CAFCはこれらの主張を拒絶し、PetersonはKnorr-Bremse事件を誤解していると述べた。

Knorr-Bremse事件に基づくと、侵害を申し立てられた者が、もし弁護士の鑑定を受けなかった、もしくは弁護士・依頼者間秘匿特権を主張することにより弁護士の鑑定を提示しないと決めたならば、裁判所には、弁護士の鑑定が侵害を申し立てられた者にとって不利であった、あるいは不利であったであろう、という反対の推論を引き出すことは認められていない。

しかしながら、もし侵害を申し立てられた者が、弁護士の鑑定を受け、その鑑定を訴訟中に提示したならば、特許権者はその鑑定について異議申し立てることが認められる。

本件では、Petersonは訴訟中にMcLaughlinの弁護士の鑑定を証拠として提示しており、それらの意見について弁護士・依頼人間秘匿特権を主張していなかった。その結果、Golden Blountには、それらの意見の中の多くの不備を証拠として申し出ることが認められていた。

したがってCAFCは、地方裁判所は、Petersonによる159特許に対する故意侵害の有無の判断に際し、McLaughlinの鑑定の不備の証拠を適切に考慮したと認定した。

Petersonはさらに、弁護士の鑑定が無かったとしても、159特許を侵害していないという正当で誠実な信念があるので、159特許を故意に侵害していない、と主張した。

CAFCはPetersonの誠実性の主張を拒絶した。その根拠として、CAFCは、Petersonは警告書を受け取った後に、159特許の侵害の有無、あるいは159特許が無効であるかを判断するための努力をほとんどしていなかったと認定した。

CAFCは、McLaughlinが審査履歴あるいは提訴された製品を検討する前に述べた、2つの弁護士の鑑定については、ほとんど重要性を見出さなかった。

CAFCはさらに、PetersonはGolden Blountの警告書に対し入念に回答しておらず、提訴された後まで弁護士の鑑定を求めていなかったと認定した。これに基づき、CAFCは、Petersonが159特許を故意に侵害したという地方裁判所の認定を支持した。

Golden Blount 判決は、侵害を申し立てられた者が、弁護士の鑑定を受けていない、もしくは受け取った弁護士の鑑定を訴訟中に提示していないならば、Knorr-Bremse事件に基づき、不利益を被らないことを指摘している。

しかしながら、既に述べたように、侵害を申し立てられた者が訴訟中に弁護士の鑑定を提示していた場合には、その意見には反論の余地が生ずる。さらに、弁護士の鑑定が無効であることは裁判所の故意侵害の認定に寄与する可能性がある。したがって、侵害を申し立てられたが提出できる鑑定書は、標準的なプラクティスに基づいた内容を持った鑑定書だけである。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2006年
  4. 3. Golden Blount, Inc. 対 obert H. Peterson Co.事件

ページ上部へ