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月刊The Lawyers 2006年6/7月号(第83回)

2. Ferring B.V. 対 Barr Laboratories, Inc.事件

No. 2005-1284 (February 15, 2006)

- 審査官に提出した宣誓書と、その情報の開示 -

本件では、CAFCは、特許の審査過程において宣誓書を提供する個人に関して、特許出願人がどのような情報を開示すべきであるかを検討した。

Ferring B.V.(以下、「Ferring」)に付与された米国特許第5407398号(以下、「398特許」)は、抗利尿薬効のある組成物と、その組成物を投与する方法に関するものである。

審査過程において、審査官は、先行文献に基づいて、398特許のいくつかの請求項を拒絶した。審査官の拒絶は、先行文献に登場する医学用語である「口の周囲の(peroral)」の意味に基づいていた。

審査官は、出願人が主張したその用語の定義に同意せず、出願人の主張する定義をサポートするために、出願人が発明者でない個人による宣誓書を提出することを要求した。それに応じて、出願人は、発明者でない4人の専門家による宣誓書を提出した。

しかしながら、4人の専門家のうち3人が以前Ferringのために働いていたり、Ferringから研究資金を受け取っていたりしたことを、出願人は開示しなかった。宣誓書が提出された後、審査官は以前に拒絶した請求項を許可し、398特許が発行された。

2002年、FerringはBarr Laboratories, Inc.(以下、「Barr」)が特許を侵害したとして提訴した。Barrは、出願人が提出した専門家による宣誓書に関して不正な行為があったとする略式判決を求める申立てを申請した。地方裁判所は、Barrによる略式判決の申立てを認め、398特許は無効であるとした。CAFCは、地方裁判所の考えを支持した。

CAFCはBarrが主張した不正な行為に関する詳細な分析を行った。不正な行為が行われたか否かを判断する際には、裁判所は第1に、審査官に対して伏せられた情報の重要性を検討する。そして、出願人が審査官を故意に欺いたか否かを判断する。裁判所は次に、出願人の行為が、特許を無効にすることを正当化するのに十分なほど深刻であるか否かを判断する。

本件では、CAFCは次のような地方裁判所の考えに同意した。すなわち、宣誓書は出願人による定義をサポートする専門家による意見を含んでおり、それによって

398特許は審査官の拒絶を覆すことができた訳であるから、宣誓書は「極めて重要」であった。CAFCはまた、次のように考えた。

3人の専門家は以前Ferringに雇用されていたり、Ferringから研究資金を受け取っていたりした訳であるから、専門家のうち3人とFerringとの過去の関係は重要であった。

そして、CAFCは、出願人が故意に審査官を欺いたか否かを判断するために、3つの要件を適用した。以下の事実が認められる場合に故意が認定される。すなわち、(1)出願人がその情報を知っており、(2)出願人がその情報の重要性を知っていたか、あるいは、知っているべきであって、(3)その情報を伏せることについて信頼できる説明を出願人が提供しなかった、ということである。

本件では、専門家とFerringとの間の従前の関係を出願人が知っていた訳であるから、出願人はその情報に関する知識があった。

さらに、審査官は明確に発明者以外からの宣誓書を要求していたので、CAFCは、その情報の重要性を出願人は知っていたか、あるいは、知っているべきであったと結論付けた。

CAFCによれば、審査官の要求において明示的に述べられていなくても、審査官の要求は次のことを出願人に通知している。すなわち、宣誓書を作成するあらゆる個人は公平であるべきであり、かつ、発明者またはFerringと関係があってはならないということである。

最後に、CAFCは、その情報を伏せることについて信頼できる説明を出願人が提供したか否かを判断し、原告(Ferring)による次の主張を棄却した。その主張とは、専門家のFerringとの関係を開示する義務を出願人は認識していなかったので、出願人は審査官を故意に欺いていなかったというものである。

さらに、CAFCは、専門家とFerringとの過去の関係を出願人が故意に隠蔽した形跡があると判断した。具体的には、1人の専門家について、その専門家の過去のFerringとの関係を省略した経歴書を出願人は提出した。さらに、過去のFerringとの関係について他の2人の専門家の経歴書を出願人は提出しなかったというものである。

重要性及び故意のCAFCの検討結果に基づいて、CAFCは、出願人の行為は特許を無効にするのに十分なほど深刻であると結論付けた。398特許は不正な行為のために権利行使不可能であるという論拠による、地方裁判所の略式判決の判断を、CAFCは支持した。

Ferringのケースの判断により、出願過程において出願人をサポートする宣誓書を提供するために、特許出願人は、現在及び過去の共働者に加えて同業者に頼ることを続けてもよいということを、CAFCは確認した。

しかしながら、この判断は同時に、特許出願人及びその代理人に次のことを教示する。すなわち、特許出願人及びその代理人は、出願人と宣誓書を提供する者との間のすべての関係を開示することに特別な注意を払って、その関係が審査官によって考慮されるようにしなければならない。

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