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月刊The Lawyers 2006年6/7月号(第83回)

1. Illinois Tool Works Inc., et al. 対
Independent Ink, Inc.事件

No. 547 U.S. (2006)

- いわゆる抱き合わせ契約と独占禁止法 -

本判決では、米国最高裁判所が独占禁止法に基づき、特許製品に「市場支配力」が推定されるべきか否かを判断した。

Trident, Inc., とその親会社Illinois Tool Works Inc. (両社合わせて、"Trident")は印刷システムの製造及び販売を行っており、自社のインクジェットプリントヘッドとインク容器をカバーする特許を所有している。

Tridentの基本的ライセンス契約は、プリンタ製造者にTridentの非特許製品のインクをTridentの特許製品のインクジェットプリントヘッドとインク容器と共に購入することを要件としていた。

その契約の下では、プリンタ製造者はTridentから独占的にインクを購入することに同意していた。ある商品の販売を他の商品の購入を条件としているこの販売方法は「抱き合わせ」として知られている。

Independent Ink, Inc.はTridentがシャーマン法第1条及び第2条に違反し、とりわけ違法である抱き合わせ販売及び独占行為を行ったとして、告訴した。

ディスカバリー後、地方裁判所はTridentの略式判決の申立てを認め、Tridentの非特許製品と特許製品の抱き合わせは、シャーマン法第1条及び第2条違反にならないと判示した。特に、地方裁判所はIndependent InkがTridentのインクジェットプリントヘッドとインク容器の特許製品から生じる「市場支配力」を証明できなかったとした。

以前の本欄(2005年7月号)で既報の通り、CAFCは地方裁判所の判決を覆した(2005年1月25日付判決)。CAFCは最高裁判所の判例に従い、抱き合わせ製品が特許製品もしくは版権で保護された製品は市場支配力が推定されるであろうと判断した。

CAFCは市場支配力の推定は専門家証言もしくは他の経済的証拠で反証されるとした。本件では、市場支配力の推定を反証するには十分な証拠がなかったことから、地方裁判所の略式裁判を覆し、Tridentにこの推定を反証可能な証拠を提示する機会を与えるため、本件を差し戻した。

最高裁判所は移送命令書の請求を認めた。20世紀初めから中期の最高裁判所のいくつかの判例は、抱き合わせ契約を認めておらず、許されない行為としていた。

それらの判例では、最高裁判所は抱き合わせ契約を不当な特許独占の延長であると考えていた。しかしながら、年月を重ねるに連れて、最高裁判所の抱き合わせ契約への反対姿勢が弱まった。

1988年、議会は米国特許法第271条(d)を改正し、特許権者が、購入条件である特許製品が関連する市場で市場支配力がある場合を除き、抱き合わせ契約を許可する法にした。

最近の特許法の改正に伴い、最高裁判所は独占禁止法に基づき、抱き合わせ契約が許されないと推定されるべきではないとした。特に、最高裁判所は特許製品を含む抱き合わせ契約には市場支配力の推定はないとした。最高裁判所は特許や購入条件を含む多くの抱き合わせ契約は、自由競争市場に完全に相反しないとした。

最高裁判所は本件を地方裁判所に差し戻し、Independent InkにTridentが関連する市場で支配力を持つことを反証する機会を与えた。

本件は、抱き合わせ契約に基づく独占禁止行為を主張する際の原告の要件が変更となった点で重要である。原告が特許権者の市場支配力を反証する証拠を提供しなければならなくなり、それにより、反証がより難しくなる可能性がある。

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