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月刊The Lawyers 2006年5月号(第82回)

4. Applied Medical Resources 対
United States Surgical Corp.事件

No. 2005-1149 (January 24, 2006)

- 最初の侵害判決の後に販売した改良品が再度侵害品として認定された場合に
最初の判決に基づく副次的禁半言が適用されるか否かを判断した事件 -

Appliedのケースにおいて、CAFCは、総額6450万ドルの支払いを命じた地裁判決を支持した。原判決では、同一の被侵害特許に関する従前の訴訟に由来する合理的な実施料率に対して「副次的禁反言(collateral estoppel)」の原理を適用することを、地方裁判所は適切に拒絶した。

CAFCはまた、同一の被侵害特許に関する従前の訴訟において陪審員が認定した故意侵害の証拠を地方裁判所が認めたことについて、地方裁判所による裁量権の濫用はないと判断した。

Appliedの特許である米国特許第5,385,553号は、套管針(トロカール)と呼ばれる外科手術用器具に関するものである。

套管針は、腹腔鏡手術に際し腹部への入口にアクセスするために使用される。腹腔鏡手術では、腹部をガスで膨張させ、套管針を通して外科手術用の器具を挿入する。ガスが腹部から抜け出ることを防止するために、套管針は、挿入された外科手術用の器具による密封状態を保持しなければならない。

しかし、従来の套管針は、様々な直径の器具に適合することができなかった。そこで、患部を密封するために、複数の套管針を使用するか、又は、アダプタを使用しなければならなかった。353特許は、様々なサイズの器具を使用した場合でも密封状態を維持可能な套管針に関する発明を記載している。この発明によれば、アダプタや複数の套管針を使用する必要がなくなる。

1996年に、Appliedは最初に、U.S. Surgicalが353特許を侵害したとして訴えた(Applied I)。裁判所は、7%の合理的な実施料率に基づく損害賠償及び侵害品販売の差し止めを認容する判決を下した。

Applied Iの間に、U.S. Surgicalは侵害品であるVersaportを再設計し、再設計品の販売を開始した。Appliedは、U.S. Surgicalが再設計品によって353特許を侵害したとして、2度目の訴えを提起した(Applied II)。Appliedは地方裁判所において略式判決を勝ち取り、CAFCは地方裁判所の判決を支持した。

次に、地方裁判所は、再設計品の販売による侵害によってAppliedの損害を判断するための審理を行った。U.S. Surgicalは、法律問題とすべく、Applied Iにおいて確立された7%の実施料率が、副次的禁反言の原理の下で拘束力を有するとの提議を行った。

副次的禁反言の原理とは、(特定の状況下において)従前の訴訟での争点について当事者が争うことを禁止するものである。U.S. Surgicalはまた、Applied Iにおいて陪審員が認定した故意侵害に関する証拠の除外を提議した。これに対し地方裁判所は、両方の提議を棄却した。そして、故意侵害による損害賠償、増額された補償的損害賠償、弁護士費用、及び、判決前後の利子を認めた。

控訴審において、U.S. Surgicalは、「合理的な実施料率はApplied Iにおいて実際に争われ、陪審員によって判断され、陪審員による認定はApplied IIにおける地方裁判所の判決に不可欠であるから、副次的禁反言のすべての要件が当てはまる」と主張した。

U.S. Surgicalはまた、「Applied IIにおける侵害はApplied Iにおける侵害が連続的に継続したものである。そのため、合理的な実施料率は、元々の製品による侵害のあった日に基づいて計算されるべきである」と主張した。

CAFCは、Applied Iに由来する7%の実施料率を適用することを拒否した。CAFCは、副次的禁反言は、以下の条件が全て満たされる場合にのみ適用されると認定した。

(1)判断されるべき争点が最初の訴訟における問題と同一である。

(2)その争点が最初の訴訟において実際に争われた。

(3)その争点の解決が、最初の訴訟における最終的な判決に不可欠なものであった。

(4)最初の訴訟において、その争点について争うための十分かつ公平な機会が各々の当事者にあった。

CAFCは、Applied I及びApplied IIにおける実施料率は同一ではないと指摘した。合理的な実施料率は、侵害が最初に始まった日に基づいて計算されるべきなのである。

U.S. SurgicalによるVersaportの再設計品は、1997年に侵害品として販売が行われたものであり、この時点で元のVersaportの製品の販売時から3年が経過していた。実施料率を計算する要素である市場の状態も、2通りの侵害時において同一ではなかった。CAFCは、さらに、「2つの独立した、識別可能な製品が特許を侵害したのであるから、これらを共通の日に開始された1つの継続的な侵害として見なすことはできない」との指摘を行った。

CAFCはまた、Applied Iにおいて陪審員が認定した故意侵害の証拠を地方裁判所が認めたことは、裁量権の濫用ではないと判断した。

Applied Iにおける判決の後に、故意侵害を回避するための努力をさらに強化したことをU.S. Surgicalが認めたため、U.S. Surgicalが2度目の侵害製品の製造を決定した際の心理状態に、その訴訟が関係していることは明らかである。

Appliedのケースは、2つの異なる製品が異なる時期に市場に持ち込まれた場合に、副次的禁反言が実施料率に適用されないということを明らかにした。

Appliedのケースはまた、「損害賠償の正式事実審理において、最初の訴訟で陪審員が認定した故意侵害は、2度目の関連する訴訟において、侵害者の心理状態を示す証拠として使用されうる」という教訓を与えるものである。

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