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月刊The Lawyers 2006年5月号(第82回)

1. Cannon Rubber Ltd. 対
The First Years, Inc.事件

No. 2005-1063, (December 28, 2005)

- 複数の実施例を1つのクレームで包含しようとする場合の
クレーム表現を取り扱った事件 -

Cannon Rubber事件において、CAFCは、クレーム中の限定要素「本体内に配置された隔膜」を、「本体内に完全に配置されたもしくは完全に取り付けられた隔膜」と狭義に解釈した地方裁判所の非侵害の判決を取り消した。

争点となっているCannon Rubberの米国特許5,749,850号は、授乳期間中の母親から母乳を搾乳する装置を開示している。クレーム1には、「搾乳器本体は吸入口を具備し、・・・本体内に変形可能な隔膜が配置されている」と記載されていた。

地方裁判所は明細書の2つの実施例を比較し、「本体内に配置された」というクレーム限定を、隔膜が完全に本体内に配置されることを要件とするものと解釈した。ここで、第一の実施例には「本体内に」と記述され、完全に搾乳器本体内に配置された隔膜が示されていた。一方で、第二の実施例では、隔膜の上部が搾乳器本体の外側に位置しており、「取り付けられた」という文言が実施例の記述に使用されていた。

控訴審において、Cannon Rubberは、裁判所が「本体内に」という争点の限定要件を通常の意味で解釈しなかったと主張した。「本体内に」は、隔膜が搾乳器本体の完全に内側に位置する場合と、部分的に内側に位置する場合の両方を意味すると主張し、更に、発明の要約において隔膜が「本体内に」あると記載していることを指摘した。

CAFCはCannon Rubberの主張を認め、地方裁判所の「本体内に配置された」という文言の狭義の解釈を拒絶し、単純な非技術用語である「in(〜の中に)」の通常の意味では、隔膜は搾乳器本体の、完全に内側に位置する場合と、部分的に内側に位置する場合の両方を意味するとした。

更に、たとえ2つの異なる実施例の記述に、「本体内に」及び「取り付けられた」という2つの文言が使用されていたとしても、この2つの例は、「本体内に」という文言を通常の意味以上に狭義に定義付ける意図がCannon Rubberにあったことを示すものではないと述べた。

CAFCは更に、2つの文言が相互排他的ではないとし、異なる2つの文言は、単に隔膜が搾乳器本体に異なる形で取り付けられることを示したに過ぎないとした。

最後にCAFCは、「発明の要約」においては、2つの実施例を言及するのに、「本体内に」という文言を曖昧に使用していると認定した。

Cannon Rubber事件では特許権者が勝訴したが、本件の事実審裁判所の認定は、特許弁護士に対し、複数の実施例で一貫した記述をすることで、事実審裁判所による狭義のクレーム解釈を回避することが可能であることを、注意喚起するものである。

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