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月刊The Lawyers 2006年4月号(第81回)

1. IPXL Holdings, LLC 対 Amazon.com, Inc.事件

Nos. 2005-1009, -1487 (November 21, 2005)

- 方法的記載を用いてシステムクレームを記載すると
記載が不明瞭であるとして無効となることが明らかとなった事例 -

IPXL事件においてCAFCは、下級裁判所が下した非侵害判決を支持した。IPXLはAmazonの「ワン・クリック・システム」が、自社の米国特許第6,149,055号(以下、055特許)に係る特許権を侵害したと主張して、Amazonを提訴した。地方裁判所はAmazonのシステムは055特許を侵害しておらず、かつ、055特許の関連する全てのクレームについて登録が無効であることを認定した。

IPXLの055特許は電子金融取引を実行するためのシステムに関する。055特許の主題は、ユーザによって事前に設定された情報を格納し、ユーザに対してひとつの画面で情報を表示し、その中からユーザが取引を選択することが可能で、かつ、ユーザがより少ないステップで金融取引を実行することを可能にするシステムに関するものである。地方裁判所は、クレーム1、2、9および15が米国特許法102条に基づき自明であり、またクレーム25がシステムおよびそのシステムの使用方法の両方を1つのクレームに記載していることから、米国特許法112条に基づき不明瞭であると認定した。

IPXLは地方裁判所の判決に対し控訴したものの、CAFCは、地方裁判所の判決を全面的に支持した。CAFCの判決は、主に不明瞭性に焦点を当て、1つのクレームの中にカテゴリーが異なる複数のクレームを混在して記載してはならないと言う基準を強調するものであった。

CAFCは、「当業者に対して発明の範囲を合理的に公示するものでなければ、そのクレームは不明瞭であるとみなされる」と説明した。とはいうものの、システムとそのシステムの使用方法の両方をカバーする1つのクレームが無効か否かの問題は、裁判所での第一印象が争点となった。

裁判所は、「装置およびその装置の使用方法の両方を記載しているクレームは不明瞭であること」を明らかにした、Ex parte Lyell 17 USPQ2d 1548(BPAI 1990)判決等における、先の特許審判部の判決を支持した。さらにCAFCは、米国特許庁の特許審査基準 2173.05 (p)(II)(1999)にそれが規則として盛り込まれていることを見つけた。

ところで、本件で、CAFCは、ユーザが取引情報を変更したり受け付けしたりするシステムを、誰かが構築した時点でクレーム25の侵害が生じるのか、それとも表示された取引情報を変更もしくは受け付けるための入力手段を、ユーザが実際に使用する時点で侵害が生じるのかは不明確であると述べている。

クレーム25は、システムとそのシステムの使用方法の両方をクレームしていることから、CAFCは、クレーム25はその技術的範囲を当業者に公示するものではないと判断し、米国特許法112条第2項に基づき無効であると結論付けた。

数種類のカテゴリーからなるクレームを1つの特許の別々のクレームに記載することは一般的であるが、IPXL判決は、1つのクレーム中にシステムと方法とを記載することは、将来的に無効となる可能性があることを示した。このIPXL判決は、特許実務者に対し、クレーム作成時に、異なるカテゴリーについては、それぞれ別々にクレームすることの重要性を説くものである。

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