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月刊The Lawyers 2006年2月号(第79回)

3. U.S. Phillips Corp. 対 Princo Corp.事件

No. 2004-1361 (September 21, 2005)

- 基幹特許と非基幹特許の包括的ライセンスを
特許を利用した抱き合わせ契約から明確に区別した事件 -

フィリップス対プリンコ事件における見解は、包括的実施許諾またはパテント「プール」による実施許諾の分野において、重要な解釈を示すものである。

米国国際貿易委員会(ITC)は、コンパクトディスクの製造に関するフィリップスの6つの特許は、特許に関して許されない束縛的な契約を採用したために権利濫用に該当し、権利行使不可能であると認定した。しかし、CAFCは判決において、ITCの命令を覆した。

フィリップスは、記録可能なコンパクトディスク(以下、「CD」)及びその製造方法に関する多数の特許の特許権者である。フィリップスは、「基幹」技術及び「非基幹」技術の両方を含むパテント「プール」により、この技術を様々な製造業者に実施許諾している。

いくつかの製造業者との間における(特許)紛争のために、フィリップスは、ITCに対し調査の開始を要求した。

調査の過程で、ITCの行政法判事(以下、「ALJ」)は、CD製造業者がフィリップスの特許権を侵害していると認定した。その一方でALJは、権利濫用のために、その特許権は権利行使不可能であると認定した。

具体的には、ALJは、実施許諾契約において提案されているパテントプール協定が、特許に関して許されない束縛的な契約を採用していたために権利濫用を構成すると認定した。

フィリップスは委員会に対して抗告したが、委員会は、ALJによる決定を支持した。委員会は、次のように認定した。「CD−RWやCD−Rの製造業者に対して、いわゆる基幹特許は、包括的なものと分離して個別には実施許諾されないので」(すなわち、プールされた特許は基幹技術及び非基幹技術の両方を含む)、非基幹技術に関する特許は、基幹技術に関する特許に対して、許されない方法で「抱き合わされて」いる。

委員会はさらに、以下のように認定した。非基幹特許は実質的に、基幹特許とは異なる製品を構成しており、フィリップスの実施許諾契約を介して、基幹特許に対して許されない方法で抱き合わされているので、かかる契約自体が、特許権の濫用を構成する。

フィリップスは、委員会の命令を不服として、CAFCに対して控訴した。CAFCは、ITCの命令を覆した。CAFCは、パテントプールによる包括的実施許諾は、それ自体または「合理の法則」による分析の下では、特許権の権利濫用を構成しないと認定した。

フィリップスの契約において、いわゆる非基幹技術が基幹技術と共にプールされていても、前述のことは当てはまるとCAFCは認定した。

CAFCは、特許権の権利濫用に対する防御について説明することに細心の注意を払った。また、CAFCは、許されない束縛的な契約が存在する場合と区別することに細心の注意を払った。

許されない束縛的な契約が存在する場合とは、例えば、多数の特許が包括的に実施許諾される際に、許諾されるパテントプールとは無関係の製品の購入が条件とされる場合などである。

「特許と製品との抱き合わせとして許されないのは、特許権者が、無関係なマーケットの製品を顧客が購入することを強要するように、特許権に由来するマーケットパワーを利用する場合である。

すなわち、そうしなければ、その顧客は係る製品を競合他社から購入するかもしれない場合である」とCAFCは説明した。その一方で、「基幹特許及び非基幹特許の両方を含む包括的実施許諾契約では、実施権者に対し付加的な製品の購入要求が課されることはない」とCAFCは説明した。

特許の実施許諾とは、単に、実施許諾された技術を使用しても実施権者を訴えないという特許権者による約束に過ぎない、とCAFCは説明した。

包括的実施許諾の場合、この約束は実施許諾されたすべての技術に適用され、実施権者は個々の必要性に従って、その技術の一部または全部を実施する。そのような実施許諾は、実施権者が代替可能な技術の使用を差し控えることになるかもしれないが、いかなる特許技術も、その使用が強要されることはない。

さらに、本件においては、フィリップスは製造されたCDの枚数に基づいて実施料を定めており、実施許諾された特許権の数に基づいているわけではない。

それゆえ、問題になっている包括的実施許諾は、実施権者に無関係の製品の購入や、望まない技術の使用を強要するものでもないし、代替技術の使用を禁止するものでもないため、その実施許諾は特許権の濫用を構成しない、とCAFCは認定した。

「基幹」特許の特許権者が「マーケットが基幹特許であると考えるものに料金を課し」、そのような特許に「非基幹」特許をパッケージングして、実質的に非基幹技術を無料で提供することは、「完全に合理的である」と、CAFCは論理付けた。

フィリップス対プリンコ事件の判決によれば、特定技術を実施するための特定特許に対してのみ実施権者が使用していると認識していても、特許権者は特許権をパッケージの一部として実施許諾できることが明らかになった。しかしながら、非特許製品の購入、望まない技術の使用、あるいは、代替技術の使用禁止を実施権者に要求することがないように、特許権者は依然として注意しなければならない。

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