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月刊The Lawyers 2006年2月号(第79回)

1. Symbol Technologies, Inc. 対
Lemelson Medical, Education &
Research Foundation, L.P.事件

No. 2004-1451(September 9, 2005)

- 継続出願制度の悪用に対しプロセキューション・ラッチェスが適用され
特許が権利行使不能と認定された事件 -

CAFCは、多くの関心を集めていたSymbol Technologies事件において、プロセキューション・ラッチェス(手続き遅延/怠慢)は、ある特定の状況において法的効力をもつ衡平法上の抗弁である旨を判示した。また、プロセキューション・ラッチェスをもたらす「不合理な遅延(unreasonable delay)」とは何かを解釈した。

本件において何故プロセキューション・ラッチェスの主張が適応されたかを理解するために、その背景を説明する。

故ジェローム・レメルソンは大量の特許出願を行うことで有名であり、Lemelson Medical, Education & Research Foundation, L.P.(以下、「レメルソン」)は、過去50年間に渡り何百もの特許出願を行ってきた。

シンボル・テクノロジーズ事件で係争対象となっているのは、マシン・ビジョン及びバーコード技術を含む14件の特許であった。これらの特許は、1954年及び1956年に出願された2件の特許出願の利益を主張していた。

1954年、レメルソンは対象を測定するための装置及び方法に関する発明を出願し、続いて1956年にはビデオイメージを使用した磁気記録方法及び装置に関する発明を出願していた。その後、1963年にそれらの出願の利益を主張して一部継続出願 (CIP) を行っており、これは先の出願に新規事項を組合わせた出願であった。また、1972年、レメルソンはこれら先の出願に更なる新規事項を加えた更なる別の一部継続出願を行っていた。

この1972年の出願は、1977年から1993年の間に出願された16件の出願の親出願である。これらの出願のうち、14件が特許され、これらの特許がSymbol Technologies事件における係争対象特許となっている。

1998年、Symbol Technologies社の顧客がレメルソンより特許侵害に関する通知を受領したのを受けて、Symbol Technologies社はレメルソンを相手取って、確認訴訟を起こした。その訴訟において、Symbol社は特にレメルソン特許はプロセキューション・ラッチェスにより権利行使不能であると主張した。

レメルソンは確認訴訟を却下させるため、いくつかの抗弁を行った。その結果、地方裁判所は確認訴訟自体は却下しなかったが、Symbol社のプロセキューション・ラッチェスの訴因を却下した。

これに対し、シンボル社はCAFCに中間上訴を行った。CAFCはプロセキューション・ラッチェスの抗弁は法的に適用できるものであるとして地方裁判所の判決を破棄し、その事実関係の更なる調査のために事件を地方裁判所に差し戻した。(Symbol Technologies, Inc. 対 Lemelson Medical, Education & Research Foundation, L.P., 227 F.3d 1361(Fed. Cir. 2002)参照)

地方裁判所は判事公判を行い、2004年1月、レメルソン特許はプロセキューション・ラッチェスにより権利行使できないとの判決を下した。これに対し、レメルソンはCAFCに控訴し、その結果今回の判決が下されたのである。

控訴審におけるレメルソンの主な主張は、レメルソンの全ての特許出願(再出願、継続出願等含む)は法に則って出願されており、USPTO(米国特許商標庁)の審査基準にも合致している、というものであった。この点には、CAFCに参考意見書(amicus curiae briefs)を提出した関係者の関心も集まっていた。

CAFCはその判決において、「再出願が不当に継続、重複されていない限り」、法に則った再出願はプロセキューション・ラッチェスの根拠になり得ない点を、注意深く指摘した。

CAFCは2002年の判決を繰り返し、プロセキューション・ラッチェスは、「ある出願がその審査において不合理で説明のつかない遅延を経て特許になった場合、その特許権利行使を不能としえる」と述べた。

またCAFCは、特許出願には継続出願を行うための多数の合法的な理由があると説明した。例を挙げるならば、限定要求に対する分割出願や、予期せぬ利益等の新たな証拠に基づき、従前に拒絶されたクレームについて行う継続出願がある。

しかし、そのような継続出願の正当な理由は「通常、ラッチェスを認定するための根拠になるべきではなく、法理は、法規定が不当に害されないように適用されるべきである」との点を、CAFCは強調した。

またCAFCは、プロセキューション・ラッチェスを認定するための厳格な時間制限は存在しないこと、及び、プロセキューション・ラッチェスは「特許制度を特に悪用したケースにおいてのみ」地方裁判所により適用される、衡平法上の救済であることを明らかにした。

CAFCはまた、どのような行為が特許出願審査における不合理な遅延をもたらすことになるかについて指針を示した。とりわけ、44年間に渡ってレメルソンにより行われてきたような継続出願を非難し、「ビジネスのために特許発行を遅らせる目的で、既に許可された発明のみを含む出願を再出願するのは、特許制度の悪用である」と述べた。

さらにCAFCは、「不当な審査遅延の一つのパターンを示す」レメルソンの多数の反復的な出願行為を、プロセキューション・ラッチェスを構成するものと認定され得る行為として言及した。

地方裁判所が「私的及び公共の権利に介入している」と判示したことに起因し、CAFCは、衡平法上の観点からすればレメルソン特許が権利行使不能であると認定されることを、認識していた。そのような状況を全て考慮した上で、CAFCはレメルソン特許はプロセキューション・ラッチェスにより無効とした地方裁判所の判決を維持した。

本件においてCAFCは、侵害を申し立てられたものが、不合理な審査遅延による特許権の権利行使不能を主張するためにプロセキューション・ラッチェスを適用できることを明らかにした。更に、特許実務者は継続出願が単にビジネスのためだけではなく、発明に関する正当な理由をもってなされていることに注意すべきである。

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