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月刊The Lawyers 2006年1月号(第78回)

3. Broadcast Innovation, L.L.C. 対
Charter Communication, Inc.事件

No. 2005-1008 ( August 19, 2005)

- 優先日は特許証の記載によって定まるわけではなく
包袋を含めた出願書類によって定まる -

IO Research Pty LTD.及びそのライセンシーであるBroadcast Innovation, L.L.C.(以下、併せてIO)は、Charter Communications, Inc.(以下、Charter)が米国特許第6,076,094号の特許権を侵害しているとしてコロラド地方裁判所に提訴した。

地方裁判所は、特許出願日より1年以上前に刊行物に記載されている発明に特許性がないことを定めている特許法102条(b)により、094特許は無効であると判示した。しかし、CAFCは地方裁判所が094特許の優先日を誤認していたと判断し、地方裁判所の判決を破棄した。

本件は特許証の表紙に記載された最先の優先日が必ずしも最先のものではないことを明らかにした点で注目に値する。

地方裁判所は094特許の最先の優先日を1995年7月18日と認定し、この発明の内容は1年以上前である1994年6月9日に公開された国際公開公報により既に公開されているため094特許は無効であると判断した。

094特許は分散データシステムに関する発明である。この発明は1992及び1993年に出願された一連のオーストラリア特許出願において最初に開示されていた。これらのオーストラリア特許出願は後に国際出願PCT/AU/93/00907として併合され、1995年7月18日に米国国内段階へ移行し、出願番号08/436,336(以下、336出願)が付与されたのち、米国特許第5,737,595号(以下、595特許)として登録された。

094特許は、336出願から派生した出願であり、この情報は特許証の表紙に記載されていた。しかし、米国国内段階移行前における最先のオーストラリア特許出願、それに続くPCT出願に関する記載は、094特許の特許証の表紙や明細書のどちらにもなかった。

しかし、094特許において最先のオーストラリア出願及びそれに続くPCT出願について優先権を主張するとの宣誓書が提出されていることが包袋から明らかになった。

地方裁判所は、094特許に595特許と同じ最先の優先日を認めず、その特許証に親出願として記載されていた336出願の出願日(1995年7月18日)をその最先の優先日として認定した。

しかし、CAFCは、その認定を誤認としたものの、094特許自体に親出願である595特許の出願日が1995年7月18日と記載されているこの状況においては、非常に理解しうる誤りであると説明した。

CAFCは、特許出願において先の出願の出願日を享受するためには、先の出願に関する具体的な記述が含まれていなければならないことを定めている特許法120条を考慮した。また、CAFCは米国特許庁により公布された、特許法施行規則1.78にも注目した。規則1.78では、特許証の表紙に先の出願に関する情報を記載するためには、明細書の初めに先の出願に関する具体的な記述、もしくは先の出願に関する情報を含んだ出願データシートの提出が必要とされる、と定められている。

しかしながら、CAFCはこれら法上の要件や規則上の要件は本件において満たされていると判断した。なぜならば、094特許にはPCT出願を国内移行した595特許出願に関して正確に記述されており、また、PCT出願からの米国に国内移行された特許出願は実質的に国際出願日を米国出願日とすることができるため、094特許にはそのPCT出願に関する記載は必要ではないからである。

よって、CAFCは、たとえ特許証の表紙及び明細書にその記述がなくとも、094特許は少なくとも国際出願日である1993年11月26日を優先日として享受できると判断した。

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