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月刊The Lawyers 2006年1月号(第78回)

2. NTP, Inc. 対 Research In Motion, Ltd.事件

No. 2003-1615 (August 2, 2005)

- 方法発明に関する米国特許を米国以外で実施して生産された製品を第三者に販売し
第三者が米国内の企業に転売した場合
米国外の生産者が侵害の教唆を問われる場合がある -

本判決においてCAFCは、米国外における行為が、米国内における行為と連動して行われた場合に、それらの行為が米国特許法に基づく方法クレームの侵害に十分に値するものとなりうるかについて審理した。

NTP, Inc.(以下、NTP)は、Research In Motion, Ltd.(以下、RIM)のBlackBerryシステムによって、NTPの特許が侵害されたと主張し、RIMをバージニア州西区地方裁判所に提訴した。

NTPの特許は電子メールシステムに関するもので、その実在する電子メールシステムは無線通信ネットワークに統合されていた。カナダの企業であるRIMは、提訴されたBlackBerry システムを販売していた。そのシステムは、ユーザーが無線装置を用いてオフィスの外から電子メールを送受信することを可能にするものであった。

裁判において、地方裁判所は、NTPの特許クレームのすべてに対し、RIMによる直接侵害・誘導侵害・寄与侵害があったと認定した。控訴審において、CAFCは、地方裁判所のクレーム解釈には部分的に誤りがあり、いくつかの方法クレームに対する侵害判決は誤りであると認定した。

判決において、CAFCはまず、地方裁判所のクレームについて審理した。地裁のクレーム解釈の決定には、「生成装置(originating processor)」という文言の解釈以外に誤りはなかったとCAFCは認定した。

本件において重要な点は、CAFCが、Philips 対 AWH, Corp.事件、No. 03-1269, 2005 U.S. App. LEXIS 13954(Fed. Cir. July 12, 2005)の判決に照らして、この文言を分析したことである。

この判例は、当業者がクレーム文言をどのように理解するかを判断するために、裁判所はまず、特許及びその審査経過を考慮してクレーム文言を解釈しなければならず、限られた状況においてのみ、辞書や専門家証言を考慮すべきであると判示していた。

したがって、CAFCは辞書の定義の使用を避け、クレーム及び明細書から、「生成装置」という文言はシステム中の全てのデータを生成する装置を指す、一般的な文言ではなく、より正確に、ゲートウェイやインターフェースのスイッチとは別の、システムの中に存在するプロセッサを指していると判断した。

こうして、CAFCによるクレーム及び明細書を考慮したクレーム文言の詳細な分析は、CAFCが特許クレームの境界を定めるために用いる可能性のある分析手法の一例となった。

控訴審において、CAFCはさらに、米国内では完全には行われなかった行為に対し、特許法を誤って適用したことを理由に、下級裁判所の侵害判決を破棄すべきかどうかについて審理した。

例えば、提訴されたBlackBerryシステムの中継部品の物理的な場所がカナダ、すなわち米国外であったことは、RIMの侵害とされた行為が、侵害要件について述べた米国特許法第271条の適用範囲外になるかどうかを審理した。

CAFCはまず、特許発明の構成要素または工程が米国外にある、もしくは米国外で実施された場合に、特許発明の使用・販売の申し出・販売が第271条(a)に基づく侵害行為となるかどうかについて審理した。

その分析において、CAFCは、過去の判例 Decca Ltd.対 United States事件, 544 F.2d 1070 (Ct.Cl. 1976)を参考にした。

Decca判例によって提供された法律的な枠組みに基づき、CAFCは、特許のシステムが「使用」された場所は、システムがそれ全体としてサービスを提供した場所、即ちシステム制御が行われた場所であり、有益にシステムを使用した場所である。

したがって、RIMの米国の顧客は生成した情報の送信を制御し、情報の交換から利益を得ていることから、システムは、米国外の中継地に関係なく、それ全体として米国内で使用されたものであるとCAFCは述べた。

しかしながら、CAFCは、「特許方法又は工程の使用の概念は、特許のシステムまたは装置の使用の概念とは、根本的に異なる」ことを理由に、NTPの主張する方法クレームについては異なる結論に至った。

CAFCは、クレームされた方法の「全ての工程あるいは段階」が米国内で使用されることを要件とする、と制定法を解釈した。したがって、必要な工程の少なくとも1つが米国外で実施されていることから、NTPの方法クレームに対し、特許の方法を「使用した」ことによる侵害は無いと認定した。

裁判所は、もしRIMが特許の方法について「販売の申し出、または販売」をしたならば、方法クレームを侵害したことになるかどうかについて、さらに審理した。この争点は単なる仮定にすぎないので、CAFCは、方法クレームが特許法上の「販売」及び「販売の申し出」の項目に基づき侵害されたかどうかを判断することを拒否した。

代わりに、CAFCは、「侵害主張された方法クレームの少なくとも一部の工程を、RIMが顧客に対するサービスとして行った行為は、侵害主張された方法クレームがカバーする発明の販売、もしくは販売の申し出とは見なされない」と判断し、「携帯装置の販売をもって方法発明の販売と見なすには不十分である」と結論付けた。

CAFCは次に、RIMが特許方法を「輸入」したという理屈に基づいて方法クレームを侵害したことになるかどうかについて審理した。この争点は概念的に難しい問題を生じる。

CAFCは、条文上の「輸入」という文言が方法クレームに適用されるかどうかについて立法の際に連邦議会が審議していないと述べた。すなわち、RIMが制定法に基づいてクレームされた発明を「販売」したかどうかの判断に「輸入」という文言が適用されるかについて審議されてはいない。

したがって、このような状況下でRIMが輸入したことは方法特許を侵害したとは見なされないとCAFCは結論付けた。

CAFCはさらに、特許法第271条(f)に基づく侵害行為はしていない、というRIMの主張を審理した。特許法第271条(f)は、部品のサプライヤーが米国内に商品を供給することで、米国内であれば特許侵害となる方法でその部品を用いることを誘発する場合の侵害行為を規定している。

CAFCは、RIMがBlackBerry装置及びその米国向け製品を米国内の顧客に供給したことは条文上の「供給」に合致しないと判断した。

したがって、CAFCは、「単に製品を供給することによって」、RIMは特許方法に含まれるいずれの工程も米国外に供給しておらず、したがって、方法クレームを侵害していないと判断した。

最後にCAFCは、RIMが、特許方法の工程に従って作られた製品に関する侵害行為を規定した特許法第271条(g)に基づく方法クレームの侵害について審理した。

CAFCは、条文上の「工程」という文言は、物理的な製品の製造を要件とすることから、この条文は特許方法の工程という無体の製品をカバーするほど広義ではないと説明した。したがって、RIMによる「情報の送信」は、物理的な製品の製造を伴うものではないことから、CAFCは、RIMが第271条(g)に基づく方法クレームの侵害をしていないと結論付けた。

こうして、CAFCは方法クレームの侵害に関する、概念的に難しい問題について判断した。特に、CAFCは、無体である送信や、米国外での活動を含む工程に方法クレームの侵害を適用するかどうかについて言及し、また、どのようにこのようなクレームが将来的に取り扱われるべきかについての重要な指針を示した。

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