1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2006年
  4. 1. MEMC Electronic Materials, Inc. 対 Mitsubishi Materials Silicon Corp.事件

月刊The Lawyers 2006年1月号(第78回)

1. MEMC Electronic Materials, Inc. 対
Mitsubishi Materials Silicon Corp.事件

No. 2004-1396 (August 22, 2005)

- 方法発明に関する米国特許を米国以外で実施して生産された製品を第三者に販売し
第三者が米国内の企業に転売した場合
米国外の生産者が侵害の教唆を問われる場合がある -

MEMC事件に関するCAFC判決は、米国の製造業者に対する海外のサプライヤー(特に半導体産業の関係者)にとって特に関連している。

その判決は、主に次の2点を考慮している。(1)海外でのどのような行為が、米国内における侵害的な「販売」を構成するか。(2)海外でのどのような行為が、米国における侵害の教唆となるか。

注目に値することは、CAFCが次のように教示したことである。すなわち、潜在的な侵害者が、第三者に販売される製品をカバーする他者の特許を知っていれば、侵害する意図があったものと推定でき、侵害を構成する行為を引き起こす意図があったものと推定されうる。

MEMC Electronic Materials, Inc.は、保有する米国特許第5,919,302号に基づいて、いくつかの被告に対してノースカリフォルニア州の地方裁判所で侵害の訴えを提起した。

被告は、半導体製造業者に対してシリコンウエハを供給するサプライヤーであり、「SUMCO」と呼ばれている。SUMCOは、もっぱら日本の米沢にある工場でシリコンウエハを製造し、製造したウエハをSamsung Japan Corporationのような顧客に販売した。

さらに、Samsung Japan Corporationはそのウエハを、テキサス州オースティンにあるSamsung Austin Semiconductorに転売している。MEMCは、SUMCOがSamsung Austinに販売する行為は、半導体用の単結晶シリコンの準備に関する302特許を直接侵害すると主張した。さらに、MEMCは、SUMCOが、Samsung Austinに対して侵害を教唆しているとも主張した。

訴訟手続きにおいて、地方裁判所は、SUMCOによるいかなる直接侵害も侵害教唆も認めなかった。控訴審において、CAFCは、直接侵害が存在しないと判断した地方裁判所による略式判決の認定を支持した。

一方で、CAFCは、侵害教唆が存在しないと判断した下級裁判所による略式判決の認定を破棄した。破棄に際して、CAFCは、侵害を立証するために提出する必要がある証拠について、長い間未解決であった問題についての指針を提示した。

米国における「販売の申し出」または「販売」に基づく直接侵害の主張をサポートする十分な証拠をMEMCが示さなかったということに、CAFCは同意した。具体的には、米国における交渉の証拠をMEMCが提出しなかったと、CAFCは指摘した。

MEMCは、これに対して次のように主張した。状況から判断して、Samsung Japanは問題となっているウエハを納入する「唯一のルート」であり、そして、製造されたウエハに関する試験データにSUMCOがアクセスしていたことは、とりわけ、「販売の申し出」を構成する。

CAFCは、この主張に同意せず、次のように述べた。Eメールは価格に関することを一切含んでいないので、技術データを含むEメールをSUMCOがSamsung Austinに送信することは、「販売の申し出」を構成しない。米国の外で行われたあらゆる交渉において持ち出されたかもしれない価格に関することは、「情報の探求とは無関係」である。

提出された証拠に基づいて、ウエハのあらゆる「販売」に関することはSUMCOとSamsung Japanの間で行われ、販売は、すべての重要な行為が行われた日本において行われたと、CAFCは結論付けた。それゆえ、製品の有用性を含む技術情報を共有したとしても、価格情報を提供しなければ、販売の申し出を構成しないと判示した。

しかしながら、審理を進める際にMEMCが侵害教唆に関する十分な証拠を提示しなかったということに関しては、CAFCは同意せず、次のように述べた。

SUMCOは302特許を知っており、SUMCOが侵害を構成する特定の行為を教示する意図があったということをMEMCは証明できるであろうと考えていたので、侵害を引き起こすさらなる意図が推定される。

さらに、Samsung Austinによる潜在的な侵害行為をSUMCOが知っていたという証拠と、SUMCOがSamsung Austinに実質的な技術サポートを提供していたという証拠は、侵害を教唆する意図を示すのに十分であるとCAFCは認定した。

意図が単に(侵害の)具体的な行為を教唆すればよいのか、それとも、加えて侵害を引き起こさなければならないのかに関して、(判例法は)明瞭性に欠ける、とCAFCは述べた。それゆえ、法律の確定していない領域であることを認めつつも、もし侵害を引き起こす意図を立証しなければならないとすれば、侵害被疑者が対象となる特許を知っていたという事実によって、このような意図があったことは推定されるとCAFCは述べた。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2006年
  4. 1. MEMC Electronic Materials, Inc. 対 Mitsubishi Materials Silicon Corp.事件

ページ上部へ