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月刊The Lawyers 2005年11/12月号(第77回)

3. Electromotive Division of General Motors Corp.
対 Transportation Systems Division
of General Electric Co.事件

No. 2004-1412, 2005 WL 1774430 (July 28, 2005)

- 実験的な販売と第102条(b) -

2005年7月28日、米国特許法第102条(b)における販売による不特許事由(on-sale bar)に基づいた特許無効の略式判決に関する地方裁判所の認定を、CAFCの合議体は支持した。

CAFC合議体の判決は、特許権者による実地試験が102条(b)における販売であるとみなされるべきか否かに焦点を置いていた。

1980年代後半、Electromotive Division of General Motors Corporation(以下、「EMD」と呼ぶ)は、ディーゼル機関車のターボチャージャーに使用される新規のコンプレッサーベアリングを開発した。

ベアリングの開発後に、EMDは2つのフェーズからなる検査プログラムを実行している。

その検査プログラムには、最初に製品の耐久性と信頼性を確認する「社内プログラム」と、それに続く、実際の使用状態における製品の品質を検証する「実地プログラム」がある。

1989年7月17日頃、EMDは社内プログラムを完了し、EMDの3つの顧客に当時使用されていた機関車内での新規のコンプレッサーベアリングの実地試験を開始した。

いずれの顧客も、実地試験に参加することに同意する契約に署名していなかった。さらに、コンプレッションベアリングに関する設計の詳細や説明書は提供されず、これらの顧客は、秘密保持契約に署名していなかった。

1989年8月28日、顧客の1人に対する注文書を改正し、追加のベアリングを「スペアパーツ」として提供し始めた。1年以上後の1990年11月27日、EMDはそのベアリングに関する特許出願を行い、それは米国特許第5,169,242号(以下、「242特許」と呼ぶ)として特許された。その後、EMDは、生産したすべての機関車にその新規のベアリングを設置し始めた。

ほとんど同様のことが、ターボチャージャー駆動の列車に使用される遊星歯車式ベアリングの、EMDによる第2の発明についても起こった。

1993年3月、EMDは、顧客の1人であるUnion Pacific Railroadとの代行契約により、実地試験を開始した。

コンプレッサーベアリングの実地試験と同様、Union Pacific Railroadはいかなる設計の詳細も提供されていなかったし、試験の間に遊星歯車式ベアリングを備える機関車の使用法を監視することも記録することも求められていなかった。

さらに、Union Pacific Railroadは、そのプログラムに参加することに同意しておらず、また、秘密保持契約に署名しておらず、その遊星歯車式ベアリングを備える機関車の使用に関するいかなる制限または監督要求の下にも置かれていなかった。

実地試験の開始後1年以上経過した1994年9月7日、EMDは遊星歯車式ベアリングを全体の生産ラインに統合した。1994年9月29日、EMDは、その新規の遊星歯車式ベアリングに関する特許出願を行い、それは最終的に米国特許第5,567,053号(以下、「056特許」と呼ぶ)として発行された。

2003年3月、242および056特許に対する特許侵害訴訟を始めた。被告は、102条(b)における販売による不特許事由に基づく特許無効の略式判決の申立てを行った。

EMDは、いずれの特許も102条(b)に基づいては無効ではないと主張して、反対申立てを行った。

実験の存在を示唆する客観的な証拠が存在しないと判断した後、地方裁判所は、それらの特許は販売による不特許事由のために無効であるとし、被告の略式判決に対する申立てを認めた。その後、EMDは控訴した。

CAFCの合議体は、Pfaff 対 Wells Elecs., 124 F.3d 1429 (Fed. Cir. 1997), aff'd, 525 U.S. 55 (1998)によって確立したテストを適用した。このテストでは、102条(b)における販売による不特許事由に基づいて特許請求項が無効にされるためには、2つの条件が満たされることを要求する。

第1に、裁判所は、商業的販売が行われたか否かを判断する必要がある。第2に、裁判所は、特許発明が既に完成されていたか否かを判断しなければならない。

その発明が「完成されていた」ことに対してEMDは異議を申し立てなかったので、CAFCは第1の条件のみ判断した。

CAFCは、第1の条件は、基準日以前の販売がもっぱら商業上の利益ではなく実験のためであったか否かを判断することを要求すると説明した。

「実験」と判断するためにどのような要素が考慮されるべきかに関する従前の判例を検討した後、CAFCは、顧客の認識と、実験に対する支配が発明者によって留保されていたか否かが、102条(b)における販売による不特許事由の判断を左右するとした。

本件について見ると、1989年8月28日に開始された「スペアパーツ」の取引は特許出願の1年以上前の商業的販売を構成すると述べて、102条(b)に基づいて274特許が無効であるとした地方裁判所の判断を合議体は支持した。

056特許に関しては、EMDが実地試験の代行を通して商業的な取引を始めたか否かを、合議体は検討した。

EMDによる実験の論拠を裏付けるために、EMDは、次の主張を行った。

(1)全規模生産の前に実地プログラムを完了することは、会社が標準化している試験方針に基づいて必要とされていた。

(2)試験の目的は耐久性を検証することであるため、監視と査察のいずれも必要がなかった。

(3)ベアリングはターボチャージャーの内部に組み込まれているため、査察は不可能でもあった。

(4)欠陥のあるターボチャージャーは検査のためにEMDに返された。

CAFCの合議体は遊星歯車式ベアリングの実地試験において、いかなる支配もEMDによって行なわれていないとしてEMDの主張を退けた。

具体的には、CAFCは、EMDはベアリングの実地使用に関する状態を監視しようとせず、ベアリングの耐久性に関してUnion Pacificからいかなる連絡も受けず、欠陥のあるターボチャージャーを返却する義務をUnion Pacific側に課していなかったとした。

さらに、CAFCはEMDはUnion Pacificに実地試験であることを認識させていなかったとした。

つまり、CAFCは、EMDが支配を欠き、顧客に認識させてなかったことにより、実地試験の主な目的は商業的な販売であったとした。

それゆえ、056特許は102条(b)における販売による不特許事由に基づき無効であるという地方裁判所の判断を、CAFCは支持したのである。

本件は、米国特許法第102条(b)の下で何が実験的使用を構成するかを判断することの重要性を示した。

公的使用または販売が実験的なものか102条(b)に基づく不特許事由になるかを判断する際に、裁判所は発明者の支配と顧客の認識を重要な要素として考慮することをCAFCは明らかにした。

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