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月刊The Lawyers 2005年11/12月号(第77回)

2. Salazar v. Procter & Gamble Co.事件

No. 414 F.3d 1342 (Fed. Cir. 2005)

- クレーム解釈における審査官の許可理由 -

2005年7月8日、CAFCは、地方裁判所による被告のProcter & Gamble Co.に有利な略式判決を破棄した。米国特許第5,535,474号(以下、474特許)の発明は、歯ブラシのブラシ上に付けた弾力性のあるマッサージ棒および研磨棒に関するものである。

地方裁判所において、被告は、原告の発明は弾力性のある棒の付いた歯ブラシに限定されると主張した。被告の製品は「弾力性のない」マッサージ棒と研磨棒を備えており、したがって、被告は474特許のクレームを侵害していないと主張した。

被告は審査官の許可理由および原告がその理由を黙認したことはクレームが限定的に解釈されることを裏付けるものであると指摘した。

審査官はその許可理由の中で、474特許の「弾力性のある」というクレーム限定に基づいて先行技術を区別していた。

地方裁判所は、被告に同意して、「弾力性のある」という文言を「元の状態に戻ることが可能な、あるいは変形後に形成可能なナイロン以外の素材である」ことを意味していると狭義に解釈した。

こうして、地方裁判所は、被告は474特許のクレームを侵害しておらず、審査経過禁反言の原則により原告は均等論に基づく侵害を主張することができないと認定した。

CAFCの合議体は争点を「許可の理由を述べた審査官による一方的な意見が、明らかに権利範囲を放棄したことになるか、そして、審査経過禁反言を生じさせるか」という点に位置付けた。

CAFCの過去の判例によれば、CAFCは審査官の許可理由は必ずしも限定するものではないと認定していた。

さらにCAFCは、そのような審査官の意見に対し出願人が何も述べなかったことだけで、権利範囲の放棄を構成するものではないと認定していた。その判決に至るにあたって、CAFCは、Elkay Mfg. Co. v. Ebco Mfg. Co., 192 F.3d 973, 979(Fed. Cir. 1999)事件において「審査官の許可理由は、出願人自身の審査中の意見書が明らかに権利範囲の放棄を構成するものであることを示すことを補うものである」と認定していた。

合議体は、本件の状況と異なり、Elkay事件における審査官の意見は、出願人自身の意見書の記述を包含するものであり、したがって権利範囲の明らかな放棄を構成するものであった、と認定して、本件と区別した。

したがって、CAFCは、「本件の出願人が黙認することによって権利範囲を放棄したという基準もしくは推定を生じることを拒絶」し、審査官の意見が一方的にクレームの内容を変更することはないことを再確認した。

この事件は、特許付与されるクレームの範囲を一方的に限定しようとする審査官の許可理由に直面するかもしれない特許出願人にとって将来、有益な判決である。

もし審査官の意見に、出願人の過去の審査官に対する意見書の記述が含まれていたならば、意見書は特許のクレーム範囲を効果的に限定するものとしてみなされる危険性がある。

反対に、もし審査官の意見が出願人の過去の主張を引用していない場合には、出願人がそれに対して沈黙することでそのような審査官の解釈に同意したと解釈される可能性は低いことを、この事件は明示している。

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