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月刊The Lawyers 2005年6月号(第72回)

3. Fuji Photo Film Co. 対 Jazz Photo Corp.事件

(2005年1月14日 CAFC判決)

- 米国外で販売された再生製品の米国内での販売行為に対し
陪審員は原告、被告双方が主張する中間的な値を実施料として決定することが可能 -

2005年1月14日、CAFCは、Jazz Photo Corporation, Jazz Photo Ltd.およびJazzの前取締役兼顧問であったJack Benum(以下、併せて "Jazz")がFuji Photo Film Company(以下、"Fuji")が所有する使い捨てカメラ(レンズ付きフィルムパッケージ)に関する特許権を直接/間接侵害していたとする地方裁判所の判決を維持する意見書を発行した。

レイダー判事が起案した意見書において、CAFCは、侵害について責任があり、かつ侵害を誘因したという陪審の認定の根拠となった実質的証拠、故意侵害、および実施料率に関する地方裁判所の判断は全く誤っていないと判断した。また、地方裁判所がFujiの損害賠償の増額および差し止め命令の請求を拒絶したことは、その裁量権を濫用したものではないと判断した。

本件の当事者間における論争は、Fujiが国際貿易委員会(「ITC」)に、Jazzを含む26社に対して再生された使い捨てカメラの輸入制限を求めて訴えを起こした1998年に始まった。

被告は皆、Fujiの使い捨てカメラを再生する際に、少なくとも8つの共通する工程を実施していることを認めた。

CAFCはITCの判決を取り消し、その8つの工程は許容される修理であると判断した。(Jazz Photo Corp. 対 Int’l Trade Comm’n, 264 F.3d 1094(Fed. Cir. 2001)参照)

さらにCAFCは、特許消尽論により、米国で最初に販売された使い捨てカメラのみにその許容される修理が適用されると判示した。

ITC判決の取り消しに先立って、Fuji社は、損害賠償と、使い捨てカメラ特許権の直接/間接の侵害を差し止めることによる救済を求めて、Jazzを相手に地方裁判所に訴訟を提起した。

Jazzは、可能性のある全19の再生工程を含む特定の再生処理を認め、その中にはITC事件であらかじめ考慮された8つの工程が含まれていた。

5週間にわたる審理の後、陪審団は以下の決定をした。

(1)Jazzは、39,889,850の使い捨てカメラを再生することによりFujiの特許権を侵害した。

(2)Jazzは、新たに製造した1,209,760台の使い捨てカメラを販売することにより故意に特許権を侵害した。

(3)Jazzは、侵害を賠償するために1つの使い捨てカメラにつき、56セントの実施料を支払う義務を負う。

地方裁判所は、Jazzによる、陪審団の結論に異議を唱えるためのJMOLの申立を却下した。

陪審団が評決に達した後で、地方裁判所は、販売された使い捨てカメラの9.5%は許容される修理であると判断したものの、Fujiによる差止め命令の請求を棄却した。

控訴審で、CAFCは最初に、JMOLの申立について棄却することを言い渡し、JMOLの基準を再適用することにより、次のように決定した。

この基準によれば、@ 陪審団による事実認定が実質的証拠によってサポートされていないか、または A 評決が法律上の誤りに基づいてなされたか、でない限り申立は棄却されるというものである。

CAFCは、Jazzは許容される修理の積極的抗弁に関して説得する義務があるが、Jazzは中国にある工場が実際に許容される修理を実行したという十分な証拠を提出しなかったと判断した。

CAFCはそこで、特許消尽論の解釈を行なった。特許権者による最初の国際的な販売の権原は、米国における特許権者の権利の消尽には何ら影響を与えるものではないとCAFCは判断した。

それゆえ、米国特許権のもと、米国内で販売された使い捨てカメラのみが、消尽論でいうところの修理による抗弁となりうる。

次に、CAFCはMr. BenunがJazzによる侵害を誘因させる必然的意図を持っていたかどうかの問題を審理した。CAFCは、意図に関する2つの基準を引用した。Hewlett-Packard Co. 対 Bausch & Lamb, Inc.において、侵害を誘発させる一般的又は具体的な意図が要求された(909 F. 2d 1464 (Fed. Cir. 1990)参照)。またIn Manville Sales Corp. 対 Paramount Sys.において、被告の行為が侵害を誘因したこと、および、被告の行為が実際に侵害を誘因するであろうことを被告が知っていたかまたは知るべきであったことを証明する責任を、原告が負うと判断された。(917 F.2d 544 (Fed. Cir. 1990)参照)

特許権者は状況証拠によって教唆被疑者の意図を立証できると、CAFCは判断した。(Water Techs. 対 Calco, Ltd., 850 F.2d 660 (Fed. Cir. 1988)参照)

JazzにおけるMr. Benunの地位は、そのCEOであることを含め、Fujiからその技術のライセンスを受けようとする彼の試みと、Jazzのビジネスモデルについての彼の指示とを加味すれば、Hewlett-Packard判例又はManville判例のどちらの基準を適用したとしても、意図に関する陪審団の認定を根拠付ける実質的な証拠となるとCAFCは判断した。

次に、CAFCは、陪審団によって設定された56セントという実施料率が合理的かどうかの判断に取り組んだ。

陪審団は、一方の当事者側の専門家によって提出された実施料率を受け入れる義務はないが、中間の実施料率を選択してもよいとされている。(Unisplay, S.A. v. Am. Elec. Sign Co., 69 F.3d 512 (Fed. Cir. 1995)参照)

Jazz側の専門家は、Fujiによる見積もりである1ドルに対し、75セントから11セントの率が適切であるとの見解を述べた。使い捨てカメラは、多大な商業的成功を収めているため、CAFCは、陪審団の決定は極端でもなければ空論でもないと判断した。

次に、CAFCは、状況全体を考慮することによって故意の問題を審理し、Knorr-Bremse Systeme Fuer Nutzfahrzeuge GmbH 対 Dana Corp. 383 F.3d 1337 (Fed. Cir. 2004)(en banc)における最近の決定を適用した。

Jazzは、遅くとも1995年にはFujiの特許を実際に認識しており、使い捨てカメラを新たに製造する積極的な方針があったことを認めた。

陪審団がMr. Benunの証言を聞き、その信憑性を検討していたため、CAFCは、陪審団による故意の認定を覆すことを認めなかった。

最後に、CAFCは、交差上訴におけるFujiの要求である損害賠償額を増加させるべきという請求と、差止め命令の請求について言及し、Fujiによる損害賠償額を増加させる請求を棄却した。

なぜなら、Fujiに有利となる要素をすべて考慮するように、Fujiは地方裁判所に要求していなかったからである。

CAFCは、この交差上訴を、前もってなされるべきであった新たな争点として考えたため、その請求は棄却された。

終局的な差止め命令の請求について、CAFCは、Fujiが具体的な差止め命令の文言を使用していなかったこと、および将来の侵害行為を判断するために必要とされる証拠が大したものではなく、かつ綿密に用意されたものではなかったことから、地方裁判所はFujiの請求を棄却することについて裁量権を濫用してはいないと判断した。

本件は、故意侵害および侵害の必然的意図を認定する基準を再確認した点で、注目に値する。加えて、CAFCは、特許消尽論の解釈と共に合理的な実施料率に関する考えを明らかにした。

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