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月刊The Lawyers 2005年6月号(第72回)

2. Electronics For Imaging, Inc. 対 Coyle事件

(2005年1月5日 CAFC判決)

- 侵害の「不確実性」による侵害被疑者の確認訴訟の可能性を明確にした判断 -

2005年1月5日、CAFCは、宣言的判決法(確認判決法)に基づく訴えを棄却した地方裁判所の判決を破棄した。

Lourie判事による意見書において、CAFCは、地方裁判所がElectronics For Imaging's (以下、"EFI")の確認判決を求める訴えを棄却したのは誤りであると判断した。

その理由は、宣言的判決法によって意図された手続の元となる議論の「不確実性(uncertainty)」を地方裁判所が誤って解釈したからであった。

EFIは、当時まだ特許登録されていなかったCoyleの印刷技術に関するライセンス契約のため、非開示契約を締結した上でCoyleと数回にわたり打ち合わせを行っていた。当該印刷技術に関する特許が登録された後で、Coyleは、度々EFIに対し訴訟および業界追放をにおわす警告を行っていた。

最終的に、EFIは、CoyleおよびKolbert Labsに対して、自分達が非開示契約に違反していないこと、およびCoyleの営業秘密(トレードシークレット)を濫用していないことの確認判決を求めて提訴した。

地方裁判所は、EFIが自身のおかれている立場およびCoyleの訴訟に対する意図に関して何ら不確実性を有していなかったと認定した。

よって、地方裁判所は、宣言的判決法の精神に一致しないことを理由に、EFIの訴えは棄却されるべきであるというCoyleの主張を認めた。

確認判決とは「未解決の争点が存在するために法的に不安定な立場にある者に、相手側からの法的行動の開始を待つことなく、その争点についての司法的解決をもたらす」ものである。(Bp Chems. Ltd. 対 Union Carbide Corp., 4 F.3d 975, 977(Fed. Cir. 1993)参照)

CAFCは、地方裁判所が確認判決に関する裁判権を行使することを要求されてはいないが、その裁判権を退ける「唯一かつ重要な裁量」を有していることを認めている。(EMC Corp. 対 Norand Corp., 89 F.3d 807, 810(Fed. Cir. 1996)参照)

確認判決に関する裁判権を行使するか否かを決定するための基準は、手続の元となる争点の「不確実性」である。宣言的判決法における「不確実性」とは、特許権者の警告によりもたらされる合理的な不安定さ、および警告により生じる、訴訟に対する判然としない恐怖心を指す。(Minn. Mining & Mfg. Co. 対 Norton Co., 929 F.2d 670, 673(Fed. Cir. 1991)参照)

宣言的判決法によって承認されている類の不確実性をEFIは何ら被っていないと地方裁判所が判断したことは、法律問題として誤った解釈であるとCAFCは判断した。

特許関連事件における宣言的判決法の目的は、侵害被疑者の法的権利に関する不確実性および遅延を取り除くことにある。(Goodyear Tire & Rubber Co. 対 Releasomers, Inc., 824 F.2d 953, 956(Fed. Cir. 1987)参照)

たとえ、EFIがその法的立場について確信していたとしても、侵害に関するCoyleの執拗かつ強力な警告による不確実性は存在していたといえる。

また、地方裁判所が確認判決の予測的な性質に着目していたこともCAFCは否定した。

CAFCは最初に事件が提訴された裁判所を支持するための一般的ルールを適用し、相手方の侵害訴訟を無効にしようとする当事者の意図や、証人活用の可能性、当事者に関する全ての必要なまたは望ましい裁判管轄権の欠如、関連する訴訟の統合の可能性、および、利益を得る真の当事者に関する考察を含めた要因について検討した。Genentech v. Eli Lilly & Co., 998 F.2d 931 (Fed. Cir. 1993)

CAFCは、判決に持ち込むために最初に提出された申立を認めることで「不公平あるいは非効率」となるような状況ではないと判断したのである。

本件は、宣言的判決法の精神に沿った「不確実性」要素に焦点をおき、それを明確にした点で意義深い。また後に起こるであろう特許侵害訴訟を考慮し、特許権の確認判決を求める訴訟において裁判権を認めるか否かに関して国レベルでの統一を図った。

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