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月刊The Lawyers 2005年5月号(第71回)

3. Shen Manufacturing Co., Inc. 対
The Ritz Hotel Ltd.事件

(2004年12月17日 CAFC判決)

- 商標の著名性 -

2004年12月17日、CAFCは判決においてThe Ritz Hotel Limited(以下、"RHL")の商標登録に対するShen Manuafacturing Co., Inc.(以下、"Shen")の異議申し立てに関するUSPTOの審査を再審理した。RHLはパリのリッツホテルを所有、運営している。

リッツホテルは世界で最も豪華で名高いホテルの一つである。RHLは今やホテルビジネスだけでなく、コーヒー、紅茶、チョコレート、グラスにシャンパンといったような商品も販売している。一方、ShenはRITZという商標を1892年にビジネスを始めたときから使用しており、おもにディッシュタオル、鍋つかみ、エプロンといった台所用品を販売している。

RHLは下記の5つの商標登録を申請した。(括弧内は指定商品と指定役務)

1) PUTTING ON THE RITZ (シャワーカーテン)

2) RITZ PARIS RITZ HOTEL 及びデザイン(カップ類、皿、スポンジ、ガラス食器類)

3) RITZ PARIS RITZ HOTEL 及び図形(カーペット、ラグ、フロアマット、リノリウム、ビニール及びプラスティック製の壁装材)

4) RITZ(料理及びワインセレクション教室)

5) THE RITZ KIDS(既成及びオーダーメイドの洋服)

審判部は1)及び2)の商標に対するShenの異議申し立ては棄却したが、4)及び5)の商標に対する異議申し立ては認容した。

RHL及びShenの両者ともCAFCに控訴し、CAFCは審判部の審決を再審理した。

第一に、CAFCはE.I. DuPont DeNemours & Co. 事件、476 F.2d 1357, 1361(CCPA 1973)において行われた混同の蓋然性を判断するテストを行った。

CAFCはDuPontケースにおける全ての要因を考慮する必要はないと繰り返し、その判決に関連した三要因を次のように挙げた。

1) Shenの商標RITZの著名性

2) 当該商標の類似性

3) 指定商品の関連性

まず、CAFCはShenのマークの著名性が積極的に保護されるほど高かったかどうかについて判示し、Shenの商標Ritzは1世紀以上にわたり使用されてはいるが、販売、広告、メディアの観点では比べものにならず、よって著名ではないと結論付けた。

Shenの商標は年間5百万ドルを超えるビジネスに関わっており、それらの宣伝は全国的に行われてはいる。

CAFCは商標が著名であると認定された判例、Giant Food, Inc 対 Nation,s Foodservice, Inc.事件(710 F. 2d 1565, Fed. Cir 1983)及びBose Corp. 対 QSC Audio Prods., Inc.事件(293 F. 3d 1367, Fed. Cir.2002)を挙げた。それらの事件では、それぞれの商標が有名であると判断された。

これら商標の関わるビジネスでは年間売上は5千万ドルから10億ドルに及び、宣伝費のみで5百万ドルも使われていた。CAFCは審判部がShenのRITZ商標が著名であるとの誤認は、実質証拠によって裏付けられたと述べた。

次にCAFCはRHLの1)の商標に関して、シャワーカーテンを指定商品としたPUTTING ON THE RITZという商標とShenのバスルームタオル用のRITZという商標の間に混同が生じることはないとした審判部の判決を維持した。

CAFCは"Putting on the"という言葉は"Ritz"と併せて使用される場合を除き何の意味ももたないというShenの主張を却下した。

CAFCはPUTTING ON THE RITZという言い回しはそれ全体で評価した際、強い商業的印象を与えると判示した。

商標中の個々の単語はしばしばより重要性をもち、それ故、要部となるが、本件ではPUTTING ON THE RITZという言い回しが洗練された全く別の印象を生み出し、Irving Berlinの歌を思い起こさせる。

このイメージは、掃除、料理といった手仕事を喚起させるShenの台所用品用の商標RITZとは大きく異なるものである。

さらにCAFCは2つの商標は呼称及び外観の点からも異なっており、よってその相違点により混同を生じさせる蓋然性は避けられるであろうと言及した。

またCAFCは、2)、3)の食器類及びカーペット用のRITZ PARIS RITZ HOTEL 及び図形の商標は、Shenの商標とは類似していないと判示した。

それら商標のレイアウトは異なっており、CAFCは、審判部が商標の要部以外に重点を置きすぎたため誤った判断を下したとするShenの主張を拒絶した。

CAFCは、消費者の観点からそれら商標が混同されるか判断されるのであり、消費者はある単語やフレーズが要部であるかどうかは気づかないことから、要部ではない部分を含む商標全体でもって判断しなくてはならず、その結果、商標全体では混同を生じる蓋然性はないだろうと述べた。

次にCAFCは4)の料理及びワインセレクションの教室を指定役務とする商標RITZに対するShenの異議申し立てを維持した審判部の決定を、混同を生じる蓋然性はないとして破棄した。

「問題となっている商品及びサービスが、消費者にその出所が関連していると思わせるか」どうかが問題なのである。

RHLの料理教室の生徒は台所用品を使用するだろうが、だからといって消費者がその料理教室の主催者と台所用品の提供者(出所)が同じであると考えることにはならない。また、料理教室は台所用製品とは同じ分野ではないことから、混同を生じる蓋然性はないと判示した。

また、CAFCは、審判部の決定を覆し、洋服用のTHE RITZ KIDS商標と台所タイル用のRITZ商標は類似していないと判示した。

商標における"The"という言葉はそう重要ではないが、RHLの商標では"The"があることによってその出所を示すことになる重要な意味をもつ。

また"KIDS"がつくことによって、消費者は台所タイルの製造者であるShenが子供服にまでビジネスを広げたとは考えにくく、Shenの商標との混同を妨げるようになる。

本件は、著名であることを理由にある商標を拡大保護しようとする場合、ある程度の使用期間が必要なだけはなく、多額の売上及び宣伝費の存在が不可欠であることを示した点で注目に値する。

さらに、混同が生じる蓋然性を判断する際、商標はその中の文字でなく、その商標全体が喚起する印象によって考慮されなければならないというCAFCの考えを明らかにした。

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