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月刊The Lawyers 2005年5月号(第71回)

1. Iron Grip Barbell Co., Inc. 対
USA Sports Inc.事件

(2004年12月14日 CAFC判決)

- 自明性の要件 -

2004年12月14日、CAFCは、Iron Grip Barbell Company (以下、"Iron Grip")の特許の各クレームを自明性を理由に無効であると判示した地方裁判所の判決を支持する判決を下した。

Dyk判事は判決で、CAFCは、Graham 対 John Deere Co.事件 383 U.S. 1(1996) において最高裁によって提起された自明性テストの第3及び第4パートについて言及した。

第3パートはクレームされた発明と先行技術との相違点の審理を求めている。第4パートは非自明性の客観的証拠についての考察である。

Iron Gripは特許侵害を理由にUSA Sports, Inc(以下、"USA Sports")を地方裁判所に提訴した。USA Sportsはこれに対して、権利行使されたクレームが先行技術に照らして自明であることから無効であると抗弁した。

地方裁判所は当初、USA Sportsは特許侵害をしたと認定をし、Iron Gripの主張を認める略式判決を下した。

しかしながら、再審理の申立に対して、地方裁判所は特許の争点のクレームは「総合的な状況」テスト及び「技術常識」のアプローチに基づき自明であると判示した。

裁判所は、過去の判例からすれば、単純に技術常識を用いた程度のものは素人が先行技術を組み合わせることが自明であると解釈されると述べた。

控訴審における争点の特許は、フィットネス器具に用いられるバーベルのようなウェイトプレートに関するものであった。

特許は使用者がプレートを掴んで運ぶことができるようにした3つのハンドル穴をクレームしていた。

特許の審査の段階において、Iron Gripはバーベルプレートのハンドル穴が1つのものと2つのものの異なる先行技術を開示していた。審査官はさらに、4つのハンドル穴を持つバーベル・ウェイトプレートを含むその他の先行技術についても考慮した。

CAFCはまず、Graham 対 John Deere Co.事件, 383 U.S. 1 (1996)の自明性テストを引用した。このテストは裁判所に対し、1)先行技術の範囲と内容;2)当業者のレベル;3)クレームされた発明と先行技術との相違点;4)非自明性の客観的証拠、の4点について審理することを要求している。

CAFCはまず、下級裁判所がクレームされた発明と先行技術との相違点について注目した際に、自明性を判断するために「総合的な状況」及び「技術常識」テストを用いたことについて言及し、このテストを後知恵の落とし穴にまともに陥るものとして拒絶した。

CAFCはGraham事件を引用し、裁判所が「後知恵的判断に陥ることを防ぎ、争点の発明の開示内容を先行技術の中に読み込む傾向を回避する」ための二次的ファクターを作り出したことに注目した。

先行技術を考察し、裁判所は、先行技術が開示している範囲にクレームされた発明が含まれるならば、自明性が推定されると述べた。

この推定は、1)先行技術がクレームされた発明とは離れた内容を教示している、もしくは、2)先行技術に関連する新たな予期せぬ結果があることを示しているならば、覆すことが可能である。

CAFCは、過去の判例法は1つの特許に開示されていた範囲の争点について言及していたが、これは本件における推定の適用を妨げないと述べた。

ここで、先行技術のプレートは1つ、2つ、あるいは4つのハンドル穴を備えていた。3つのハンドル穴を備えるIron Gripの特許は、明らかに先行技術の範囲内に含まれるものであり、従って自明性の推定が生じていた。

裁判所はさらに、Iron Gripは自明性の推定を覆すことができなかったと結論付けた。

第一に、Iron Gripは、先行技術が3つのグリップを教示していないという証拠を何も提示していなかった。第二に、3つのグリップが予期しない成果をもたらすこと、もしくは、3つのグリップが1つ、2つ、あるいは4つのグリップよりも優れているという理由を示す何の証拠もなかった。

裁判所は、特許及びその審査経過は、ウェイトプレートの3つの細長いグリップを備えることによる新たな予期せぬ成果を何も開示していなかったと結論付けた。

さらにCAFCはDeer事件のテストの第4パートについて言及し、地方裁判所がその分析における二次的考察について言及しなかったこと自体は、明白な誤りであると認定した。

しかしながら、裁判所は、商業的成功、長年の切実な要求を満たしていること、およびコピー商品といった二次的ファクターを用いて、記録上の証拠に基づき、特許性をサポートするための関連する二次的ファクターがないと判断した。

Iron Grip事件において、CAFCは複数の先行技術引用例において開示されている範囲は、その範囲内の1つの数字に関するクレームに対し自明性の推定を生じると判示した。この事件は、裁判所が一連の先行技術の範囲を考察したことで、「技術常識」及び「総合的な事情」テストを、許されない後知恵に依存しているものとして拒絶した点においても興味深い。

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