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月刊The Lawyers 2005年4月号(第70回)

1. Caterpillar 対 Sturman Industries事件

(2004年10月28日 CAFC判決)

- 共同発明者として認定されるために必要とされる貢献の度合いに関する判決 -

2004年10月28日、CAFCは特許発明者に関する意見を明示し、さらに、共同発明者としての資格を与えるためにはどのような貢献がなされるべきかを判断する基準を明らかにした。

Prost判事による意見の中で、CAFCは、Fina Oil & Chem. Co. v. Ewen, 123 F.3d 1466, 1460(Fed. Cir. 1997)において概要が説明されている共同発明者の基準を改めて表明した。

共同発明者の基準は、発明全体に対する貢献が「質において些細なものではない」かどうかを問題とする。例えば、真の発明者に対して単によく知られた技術を説明した者がいても、そのことだけでその者が共同発明者になることはない。

本事件は、イリノイ州中央地区の米国地方裁判所からの控訴に関するものである。地方裁判所では、陪審員はディーゼルエンジン製造業者のCaterpillar, Inc.(以下、"Caterpillar")に対し、燃料噴射器を開発する共同事業の元パートナー、Sturman Industries, Inc. (以下、"Sturman")による営業秘密流用、契約違反及び横領に関する主張について、有利な判決を下した。

Caterpillarはまた、発明者の訂正を求め、燃料噴射器の2系統スプール・バルブを対象とするSturmanの米国特許、No. 5,460,329 and 5,640,987(「Sturman特許」)に、共同発明者として名を連ねることを要求した。

これに対しSturmanは、3系統一体型スプール・バルブに関するCaterpillarの米国特許、No. 5,479,901(「Caterpillar特許」)の発明者をSturmanに訂正すべきであると反訴した。

Sturmanはまた、あらゆる共同事業特許がCaterpillarに帰属することを認める共同事業契約(以下、JDA)に彼らが署名するように、CaterpillarはSturmanを故意に欺こうとしたことについて反訴した。

地方裁判所は発明者訂正の主張について裁判官による裁判(ベンチ・トライアル)を実施し、両方の発明者問題についてSturmanに有利な判決を下したが、契約不履行に関する特定行為について救済を認め、さらに、Sturman特許の所有権がCaterpillarにあるとした。

Sturmanは営業秘密流用及び契約違反に関して控訴し、Caterpillarは発明者の決定についてCAFCに交差上訴した。

CAFCは、Caterpillarによる故意の欺きについてSturmanが行なった反訴に対するCaterpillarの勝訴判決を覆し、さらにSturmanをCaterpillarの特許の単独発明者とする結論を覆したものの、CaterpillarがSturmanの特許の共同発明者としての資格がないとする結論は支持した。

CAFCは、Hess v. Advanced Cardiovascular Systems, Inc., 106 F.3d 976, 980(Fed. Cir. 1997)事件判決を引用し、特許の付与により、記載された発明者が真正かつ、唯一の発明者であるとの推定が働くことになると認定した。

発明者を訂正するためには、この推定に反駁するための、発明者として記載されるべきであると主張する者が共同発明者であることを立証する明確かつ説得力のある証拠がなければならない。

CAFCは、共同発明者の基準に関してFina Oil 事件判決を引用し、クレームされた発明の概念に対する貢献が、発明全体の特徴と比較して「質において些細なものではない」ことが求められるとした。Caterpillarは、彼らはスプール・バルブに使用される残留磁気を有する特定の物質を識別したので、自社のエンジニアがSturman特許の共同発明者に当たると主張した。

Sturman特許の一つは、「スプールの位置を維持するのに十分な残留磁気を有する物質」の限定を有するクレームを含む。

しかしCAFCは、従来技術文献から得られる示唆を、物質の特性に関する公知の情報と併せて考慮すれば、材料の選択は当該分野における通常の創作能力の発揮に過ぎないと認定した。

材料の選択におけるCaterpillarのエンジニアの貢献は、いずれの特許のクレームされた特徴の一部にもならなかった。その結果CAFCは、Sturmanがその特許について真正かつ、唯一の発明者であるとの推定を反駁するための、明確かつ説得力のある証拠をCaterpillarは提示しなかったとする、地方裁判所の判決を支持した。

地方裁判所は、Sturmanの2系統スプール・バルブに対するCaterpillarの改良は、技術分野における通常の能力の発揮に過ぎないと判断し、SturmanがCaterpillar特許でクレームされている3系統スプール・バルブの単独発明者であると認定した。

控訴審において、Caterpillarは、地方裁判所が、以前は記載されていなかったクレームされた他の特徴ではなく、発明の「本質」であるスプール・バルブに誤って焦点を当てていると主張した。

CAFCは、地方裁判所はSturmanが3系統スプール・バルブの発明について、明確かつ説得力のある証拠を提示したものと誤ったと判断し、地方裁判所が認定した2系統バルブと3系統バルブとの間の複雑さに関する相違は、発明全体と比較して「質において些細なものではない」と結論付けた。

その結果CAFCは、Sturmanを3系統スプール・バルブ特許の単独発明者とする下級審の判決を覆した。

Sturmanの契約不履行に関する訴えは、陪審員の忌避を認めなかった地方裁判所の判断に焦点が絞られた。本件の陪審員の中には、Caterpillarで働く配偶者を有する者がいた。Sturmanは公判時に、この陪審員に対して特に異議を唱えなかったが、予審法廷はCaterpillarの現在または過去の従業者及びその配偶者に対するSturmanの包括的異議を認めた。

CAFCはイリノイ州法を適用し、法律問題として、Caterpillarの従業者の配偶者であった陪審員からは偏見が示唆されるため、排除されるべきであったと決定した。

その陪審員が陪審に加わっていたので、CAFCは営業秘密横領、契約不履行及び横領の主張についてCaterpillarに有利な陪審評決を破棄し、再審理を命じた。

その結果、CAFCは、Sturman特許の所有権がCaterpillarにあるとした地方裁判所の特定行為について救済を無効にし、また、JDAの署名に際して故意に欺こうとしたとのSturmanの反訴に対する地方裁判所の略式判決を覆し、Caterpillarは紛らわしい文書を記載して、Sturmanに対して一体型スプール・バルブはJDAに包含されないと提示したという重要事実についての真の争点に言及した。

本件は、特許発明の共同発明者としての権利を要求する者がどのような貢献をなすべきかという基準をCAFCが明らかにした点で、重要である。

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