1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2005年
  4. 2. Bilstad 対 Wakalopulous事件

月刊The Lawyers 2005年3月号(第69回)

2. Bilstad 対 Wakalopulous事件

(2004年10月7日 CAFC判決)

- クレームにおける「複数」の解釈と、明細書における「複数」の十分なサポート -

2004年10月7日、CAFCはBilstadおよびその関係者(合わせて"Bilstad")と、Wakalopulos およびその関係者(合わせて"Wakalopulos")との間の抵触審査に関し、特許控訴抵触審判部 (the Board of Patent Appeals and Interferences, 以下、「審判部」)によるWakalopulousに有利な審決を取り消す判決を下した。

本件における争点のクレームは、複数の方向に物体を動かすことを容易にする消毒装置の改良に関するものである。

審判部は複数という文言を「下端部では2方向に制限された範囲、上端部では無制限にあるいは無限の範囲」を意味すると解釈し、さらに、「複数」という文言は「少なくとも2つ以上」を意味すると結論付けた。

Bilstadのクレームに対応する開示には、多方向へ動かす記述はされておらず、物体を動かすことが可能な少数の方向しか開示されていなかったことから、審判部は、Bilstadのクレームは米国特許法第112条第1項の明細書記載要件に照らして特許は付与されないものと決定した。審判部の見解において、Bilstadのクレームは、物体を動かすことが可能な多数の方向を文言上包含するということであれば、特許付与されるためには多数の方向を教示した開示によるサポートがなければならないというのである。

控訴審において、CAFCは審判部の「複数」という文言の解釈は支持したが、明細書記載要件の適用については認容せず、判例をレビューし、ある状況において「種(species)」の開示は後続のクレームのその種を含む「属(genus)」を十分に説明するものであるという一般的な原則を否定した。

しかし裁判所は、この一般的なルールには2つの例外があることを認めた。第一に、属の他の部分によって、開示された種と同様のことが実行できることを当業者が容易に理解できない場合、すなわち、その技術が予測不可能であった場合、明細書記載要件を満たすためにはより多くの種の開示が必要となる。

第二に、発明者が後続の属クレームによって包含される主題を明示的に放棄している場合、たとえ開示があったとしてもそのクレームをサポートする記述をしていることにはならない。

控訴審の記録をレビューしてCAFCは、審判部が、その技術の予測不可能性についての認定も、Bilstadの開示が多方向操作を明示的に放棄しているかどうかについての認定もしていなかったことに気付いた。

したがって、審判部は状況に基づいて必要とされる十分な記載に関するテストを適用しなかった点で法律上の過ちを犯した、とCAFCは判示した。結果として、CAFCは審判部の判決を破棄し、第一審において必要な事実認定をするよう事件を差し戻した。

この事件は、明細書記載要件がCAFCの数々の判決においてその適用に関して議論されてきているにもかかわらず、その有効性を認めている上で重要である。この判決はさらに、属/種クレームに関連する明細書記載に関する裁判所の原則も明らかにしている。

  1. トップページ
  2. 米国連邦裁判所(CAFC)判決
  3. 2005年
  4. 2. Bilstad 対 Wakalopulous事件

ページ上部へ