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月刊The Lawyers 2005年2月号(第68回)

2. Carl F. Klopfenstein 対 John L. Brent Jr.事件

(2004年9月13日 CAFC判決)

- 特許法第102条(b)の刊行物の範囲 -

2004年8月18日、CAFCは、特許法102条(b)における「刊行物」は何であるかについて言及した判決を下した。

Prost判事の判断は米国特許庁審判部からの控訴に対して下された。本件においてCAFCは、米国特許出願第09/699,950号(以下、50出願)の出願の拒絶を維持した。なぜならば、その発明はその出願日の1年以上前に刊行物に記載されており、特許102条(b)により新規性がないと判断されたからである。

本件は、哺乳動物に加工大豆子葉繊維を2倍含む食物を与えた場合、HDLの値は上昇する一方で血清コレステロール値の低下を促進させる働きがあることを控訴人が発見したことに始まる。

控訴人は、2000年10月30日に加工大豆子葉繊維を含む食物の製造方法の発明を出願をした。その審査経過において、本件で問題となっている発明は、Liu引例のものと同一であり特許法102条(b)の規定により、もしくは自明であるとして拒絶された。

Liu引例は、控訴人が同僚のM.Liuとともに1998年10月にアメリカ穀物化学者協会(AACC)の学会において行ったスライド発表である。

この発表は14枚のスライドを使い、その内容は印刷され、学会中2日半にわたって掲示板に展示されていた。また、このスライド発表は1998年11月にカンザス州大学での農業実験所(AES)においても1日弱の間、展示されていた。

出願人は審判部に審判請求したが、審判部も審査官の拒絶査定を維持し、出願人はその決定に対しさらに控訴した。

控訴審において出願人は、Liu引例は特許法102条(b)における刊行物に値しないと主張した。なぜならば、それは頒布されているわけでもなく、図書館及びデータベースの索引にも載っていないからである。

出願人は、Liu引例が刊行物にあたるか否か決定するにあたって、裁判所はその引例が頒布されているかどうか検討しなければならないと主張した。頒布とは複写物の配布、及びまたは図書館、データベースの索引に掲載されることも意味すると主張したが、CAFCを納得させるには至らなかった。

CAFCはLiu引例は特許法102条(b)における刊行物に値するほど、公衆が十分入手可能であったと判示した。この判決に至るにあたって、CAFCはその引例が「公知」であるかどうか判断する際、公衆の入手可能性は考慮すべき重要な要因であるが、それが唯一の要因ではないと理由付けた。

むしろCAFCは、下記の4つの要因を本事項を判断するにあたり検討した。

1) 展示期間

2) 聴衆の専門的知識

3) 展示物がコピーされないという合理的予測の有無

4) 展示物をコピーすることの簡潔さ、容易さ

これらの要因を本件に照らし合わせた結果、CAFCはLiu引例は特許法102条(b)における刊行物に値するという結論に至った。

まず第一に、Liu引例は長期にわたって当業者である公共のメンバーに展示されていた。次に、これら公共のメンバーはその引例をメモしたり、撮影したりすることを禁じられていなかった。第三に、引例は単純な方法で展示されており、そのコピーをすることは容易であった。最後に、発明者がその情報のコピーまたは頒布を防ぐための制限をなんら課していなかったため、公衆が開示されている情報をコピーしないであろうと発明者が予測することは合理的にあり得なかった。

本件はある引例が特許法102条(b)における刊行物に値するか否かを決定する際に必要な要因を示した点で重要である。これらの要因に拠れば、公のイベントにおける展示物は刊行物になり得るのである。

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