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月刊The Lawyers 2005年2月号(第68回)

1. Knorr-Bremse Systeme 対
Dana Corp. and Haldex Brake.事件

(2004年9月13日 CAFC判決)

- 弁護士の鑑定を開示しなかった者に対する不利な推定の適用 -

2004年9月13日、CAFCは全員法廷により、申し立てられた行為に関する弁護士の鑑定を事前に取っていないかまたは開示しない者に対して裁判所が不利に推定できるという判例を覆す判決を下した。

本件において、Dana Corp. (Dana)はスウェーデンの製造業者であるHaldex Brake Products Corp. ("Haldex")と "Mark II" の名で知られているエアディスクブレーキの米国内における販売契約を締結した。

ドイツにある企業でエアディスクブレーキの製造業者であるKnorr-Bremseは、この契約の締結を知って、Haldexとヨーロッパにおいて特許係争中であることをDanaに通告した。

さらに、エアディスクブレーキに関する米国特許出願中であることもDanaに通知した。そして、1999年7月27日、米国特許第5,927,445号(445特許)が発行された。本特許はKnorr-Bremseのエアディスクブレーキの発明をクレームしていた。1999年8月、Knorr-BremseはDanaに特許が発行されたことを通知した。

2000年5月、Knorr-BremseはDanaとHaldexに対し445特許の侵害を理由に訴訟を提起した。地方裁判所はKnorr-Bremseの略式判決の申し立てを認め、HaldexのMarkIIのブレーキは文言上445特許を侵害するという略式判決を下した。非陪審審理後、地方裁判所はさらに、Haldexの設計変更したMarkIIIのブレーキも文言上445特許を侵害すると認定した。

裁判所はさらに、上訴人(DanaとHaldex)が445特許を故意に侵害し、本件は米国特許法285条により「例外的な場合」として扱われると判断し、Knorr-Bremseの弁護士費用の賠償請求を認めた。

開示手続の中で、Haldexは弁護士・依頼者間の秘匿特権を主張し、弁護士から受けた法的助言や忠告の開示を拒んだ。Danaは自らは弁護士に相談せず、Haldexが受けた助言を信頼していた。

Haldexは免責となる証拠を開示しなかったため、Haldexの主張を不利に推定し、故意の侵害行為と認定した。HaldexとDanaはこの判決に対して控訴した。

控訴審において、CAFCは下級裁判所の故意の侵害行為の認定を無効とし、全体の状況を参酌して判断させるため、事件を下級裁判所に差し戻した。

この判決に至るまでに、CAFCは以下の4つの問題点を挙げた。

(1) 被告が弁護士・依頼者間の秘匿特権および/または職務活動成果(ワーク・プロダクト)の秘匿特権を行使した場合に、事実認定者(陪審員)が故意侵害について被告に不利な推定をすることは適切であるか?

(2) 被告が法的助言を受けていない場合に、故意侵害に関して被告に不利な推定をすることは適切であるか?

(3) 裁判所が被告に不利な推定が働かないと判例を変更する場合、本件の判決はどうあるべきか。

(4) 法的助言を受けていなかったとしても、侵害に対する実質的抗弁がある場合、故意侵害はないと推定できるか?

第1の設問に関して、CAFCは「NO」と回答し、「特許に関する弁護士とのやりとりの開示について不利益を蒙るリスクはあってはならない。そのようリスクは、弁護士・依頼者間の完全なコミュニケーションに介入するものであり、最終的に、弁護士・依頼者間のオープン且つ確かな信頼関係を促す公共の利益を侵害するものである」と述べた。

CAFCは、もしこれが許されるならば、こうした事件において、最終的には「弁護士・依頼者間の関係を歪曲する」ことになると理由付けた。

第2の設問に関しても、CAFCは「NO」と回答し、「他者の特許権の侵害を回避するために相当な注意を払う積極的義務がある」が、免責である旨の意見を得ることを怠ったからといって、仮に意見を得たとしたら、その意見は不利なものであっただろうと自動的に推定されないと理由付けた。L.A. Gear Inc. v. Thom McAn Shoe Co., 988 F.2d 1117, 1127 (Fed. Cir. 1993).

CAFCは弁護士に相談することによりかかる負担と費用を考慮すると、被告が法的助言を得なかったことで不都合な推断することは不適切であるとした。

第3の設問に関して、CAFCは、不利な推定を除外することは 「全体の状況の重要な変化である」とし、そのため、地方裁判所の故意の侵害認定を破棄し、審理を差し戻した。

最後に、CAFCは第4の設問に対しても否定し、強力な抗弁は多くの要因の中のひとつの要因に過ぎず、裁判所が侵害が故意か否かを決定することを考慮すべきとした。

よって、CAFCは全体の状況を考慮して故意の判断はされなければならなく、被告が弁護士に相談したか否かが問題ではないとした。

本件は、弁護士から有利な鑑定書を得ず、あるいは、開示しなかったことを理由に不利な推定を許容する先の判決を覆した点で重要である。

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